Australian students get remedial language help
オーストラリア・メルボルンのモナシュ大学は、大学1年生の9割が名詞や形容詞の区別ができないという実態に対処するため、国語の補習コースを導入した。
同大学のダン教授によると、学生の大半が文法をほとんど理解していないという。
同大学講師のユンソン氏は、学生の読み書き能力の低下は、高等学校教育に起因すると指摘しており、国語教育カリキュラム作成者として、シドニー大学フリーボディー教授が選出されたことに対して疑問を抱いている。基礎的な読み書き能力より、クリティカルリテラシーに重きを置くフリーボディー教授の作成するカリキュラムでは、高校卒業者の読み書き能力向上は望めないという。
(要約:OFIASインターン前田葉)
オーストラリア大学生のための国語補修授業
ラベル: オーストラリア
QAAがバッキンガム大学の問題点を指摘
QAA finds fault with Buckingham
英国学生調査によると、バッキンガム大学の学生満足度は非常に高い。学内には元教育視察官の職員や、教育水準を専門とする教授も在籍している。
しかし、私大である同大学が、英国高等教育質保証機構(QAA)の監査を自主的に受けたところ、同大学の学術水準管理は信頼に値しないとQAAは報告した。QAAは、バッキンガム大学の学術水準、入学水準の管理不足や意思決定機能の脆弱さを指摘するとともに、同大学の学術水準を監督する学外諮問委員会も、バッキンガム大学の一部化しつつあるとして、その馴れ合い体制を批判した。また、新規開講コースの承認委員会も存在せず、委託された外部専門家が、コース提案者から受けとったチェックリストをそのまま教育委員会や送付しているという実態が判明した。
これに対し、同大学副学長キーレイ氏は、実際に授業や研究室、試験を視察することなく、大学を誹謗中傷したとしてQAAを非難した。また、同大学では、高い信頼が個人間で築かれているため、そういった委員会を必要としていないと反論した。
(要約:OFIASインターン前田葉)
海外動向(THE 2008年10月9日号)
Overseas briefing
インド
「革新」が進歩の鍵
インド全国技術教育審議会元会長のナタラジャン氏は、教育の質に関する第6回会合において、インドの高等教育は「革新」か、或いは「滅亡」かの瀬戸際にあると述べた。同氏は、学生が卒業後はすぐに就職しなければならないと感じていることが、インドの大学における研究の妨げとなっていると指摘している。学生がどれ程の知識を得ているかではなく、得た知識を使って何が出来るかを重視し、インプットよりアウトプット志向であるべきだと、ナタラジャン氏は主張する。
カナダ
学長、最後の贈り物
アルバータ大学ニューウェル学長が退職の折、北米先住民族の学生と教職員の会合の場所をキャンパス内に創設する為に、100万カナダドル(52万6千ポンド)を寄付した。同氏は、先住民族はマイノリティとして不利な集団であるが、教育によってその差が改善できる、と述べている。この寄付により、同大学の2008年度の寄付金額は5億カナダドルを越え、トロント大学に次ぐ多額の寄付を得ることに成功した。
オーストラリア
天文学者、主役になる
天文学者ペニー・サケット氏が、常勤のオーストラリア最高科学責任者に指名された(注)。同氏は11月より、非常勤として2年半勤めたピーコック氏の後任として同職に就くが、現在勤めているオーストラリア国立大学にも在籍は続ける予定である。サケット氏は女性科学者の会に所属し、英国王立天文学会の特別研究員でもある。
韓国
若者人口、減少傾向
韓国では、高齢化が大学に影響を与えている。若者人口の減少のため、一部の大学では、入学者数が定員の70%を下回る定員割れが起こっている。東亜日報によると、平均入学率は昨年度の95.8%から94.3%と下落し、首都ソウルから離れるほどその影響は深刻である。
アメリカ
イラク人研究員、差別を訴える
イラク人イスラム教徒の研究員が、礼拝用敷物に汚物を投げつけられたとして、テキサスA&M大学を訴えた。ムンディル・リダ氏とサイーダ・アリ・ムセン氏は、同大学生殖科学研究所で体外受精を専門に研究している。両氏は人種と宗教で差別を受けてきたとし、同大学と一部の部署、及び5人の元同僚を相手に訴訟を起こしていると、ニューヨークタイムズ誌は報道している。
アメリカ
代替療法、停止される
マイアミ大学チームによって行われてきた代替療法の研究が、療法に伴う危険性の説明が不足していたとして中止された。1500人の心臓病患者がこの研究に協力していた。この研究はビタミンやミネラル、キレート化合物の投与を行い、静脈注射によって血中のカルシウムを増加させるというものである。しかし、アメリカ心臓協会は、効果は立証されておらず、肝機能不全等の副作用を起こす可能性があると警告している。
注:オーストラリア最高科学責任者職が常勤となるのは、1996年以来初のことである。
(要約:インターン 早野文菜)
英国大学、世界大学ランキングにおいて転落(THE2008年10月9日号)
Fears four UK strength as its institutions slip down top 200
2008年度のTHE-QS世界大学ランキングによれば、アメリカの大学がトップの座を確固たるものとしているのに対し、イギリスの大学は地位転落の傾向にある。
ハーバード大学が5年連続で1位を獲得する一方、イギリスの名門であるケンブリッジ大学は3位に転落、オックスフォード大学は前年度の2位から4位へと落ち込んだ。上位100大学の内、イギリスの大学からは17校が選ばれているが、これは前年度より2校少なく、世界大学ランキング200全体においても、イギリスはその地位を落としつつある。
この結果は、イギリスでの研究教育資金額の問題を浮き彫りにしている。イギリスが高等教育に充てる予算の割合は、OECD諸国の平均を下回っており、アメリカの半分にも満たない。イギリスの研究型大学19校から成る、ラッセルグループ事務局長パイアット氏は、イギリスの大学の競争力への懸念を表明している。同氏は、中国やインド、ドイツ、フランス、中東やオーストラリアなどとの競争が激化している点を指摘し、資金不足のままでは競争に勝ち抜くことは難しいと述べている。
学生の授業料負担増も検討されているが、イギリスの大学も、今後はアメリカの大学のように、寄付金によって競争力を高める方向性にあると、ロンドン大学のグラント教授は述べている。
公共政策と高等教育を専門とする、テネシー州バンダビルト大学ロス助教授は、アメリカの大学教育は市場主導型であるために競争力が高いと述べる一方で、教育費の高さと格差の存在という欠点を指摘している。ロス教授によれば、進行中の経済不況や金融引き締め政策が、状況の変化に繋がる可能性は大きいという。
世界大学ランキングでは、アメリカとイギリスの大学が伝統的に上位を占める中、オーストラリア国立大学が16位、チューリッヒ工科大学が18位に食い込んだ。その他、南アフリカのケープタウン大学(179位)、ブラジルのサンパウロ大学(196位)と健闘する大学も現れている。
(要約:OFIASインターン 早野文菜)
学生、卒業後の投資に期待(THE 2008年9月4日号)
Students happy to invest in future
学生側の経済状況は厳しいが、多くの学生は学位取得によって、将来的に安定した投資が可能になると考えている。
2000人以上の全日制学生を対象とした大学生活調査(THE9月11日号に詳細掲載予定)によれば、卒業までに1万ポンド以上の借金を抱えることが予想される学生は63%で、2006年度の 39%という予測より大幅に増加している。更に1万5千ポンド以上は41%、2万ポンド以上は18%と、いずれの割合も2006年度調査に比べて増えている。しかし一方で、64%の学生が将来的な投資によってこの借金を返済できると考えている。これは、政府が来年度の学費水準見直しを考えていることによる。こうした楽観的見通しは学生の専攻分野によって異なる。先行きの不安を感じる学生は芸術や人文学系統に多く、薬学系統専攻では少ない。
金銭面に次いで大きな学生の不安は、仕事と学業、そして社会貢献の両立である。全国学生連合(NUS)は、バークベック大学クレア・カレンダー教授の意見を引いて、現行の補助金制度はむしろ学業に逆効果であると述べている。
ラッセルグループで与えられる奨学金は1791ポンドで、77%が学生の経済状況を支給基準としている。一方でミリオン・プラスにおいてはそれぞれ680ポンド、45%である。ミリオン・プラス事務総長のパム・タットロー氏は、現在の制度における不均衡を正すため、総体的な援助の見直しが必要であると述べている。
NUSの調査によれば、政府が授業料の上昇に歯止めをかけなければ、学生の借金は卒業によるメリットを超えると予測されている。そうなれば財政状況によって教育機関間の差も広がり、講師陣は生徒の要求に応えるため、更なる重圧に耐えねばならなくなる。そして学生は今以上に働かなければならなくなるだろうと考えられる。
(要約:OFIASインターン 早野文菜)
海外動向(THE 2008年8月21日号)
oversea briefing
アメリカ:懲戒処分の講師、職場復帰
自身の開講する講座に履修登録したために解雇された大学講師、ヘンリー・ダグラス氏が、裁定人の判断により復職する。同氏はアラバマのビショップ・ステート・コミュニティ・カレッジ講師であり、資格基準を満たす為、大学役員より講座の登録を勧められたと主張している。今回の裁定人であるジェームズ・オドム氏は、懲戒が妥当であり、それ以上の処罰は不当であると判断した。
韓国:大学全入時代の到来
高等教育の場の拡大により、大学受験生総数に対し、定員数が大幅に増加している。この為、受験生はたとえ入学試験で0点をとったとしても合格することが可能となった。政府による大学設置基準緩和と高等学校の大学化が行われて以来、韓国の大学数は大幅に増加している。
オーストラリア:中国人留学生、高まる犯罪率に警戒
オーストラリア各都市の高い犯罪率は、アジアからの留学生流入の妨げとなっている。在シドニー中国領事館は、オーストラリアに留学生の保護をより強く訴えている。ニューサウスウェールズ州は、18万人を超える留学生を受け入れているが、中国人留学生が最も多くの割合を占めている。
ヨーロッパ:ヨーロッパ大陸の教育の質、保証される
高等教育質保障機構が、欧州質保障登録簿(EQAR)の登録申請に向かっている。この登録簿は欧州高等教育の調和を目指すボローニャ・プロセスの指標とされている。登録が承認されれば質保障機構は個々に報告書を提出することが義務付けられる。EQAR理事会会長のレスリー・ウィルソン氏は、登録簿は欧州の学生と職員に、教育機関と学位取得プログラムの信頼性を示すと述べている。
インド:教育機関、危機的状況に陥る
60年の歴史を誇るガウハチ大学は、2006年に発覚した財政上の不正行為と大学副総長の解任のため、苦境に立たされている。後任である、著名な物理学者アマリヨティ・チョウドハリー氏も政府を批判したために、二年足らずで辞任した。インド・エキスプレス紙は、ガウハチ大学は深刻な財政危機に苦しんでいると報道した。
アメリカ:全裸写真で退部処分
ネブラスカ大学学生ポール・ドナホーとケニー・ジョーダンは、同性愛者向けアダルトサイト、Fratmetv.comに全裸写真を公開したとして、同大学レスリング部を退部処分となった。同サイトの管理者は、学生達への謝礼は充分に支払われており、昨今の学生スポーツ選手であれば、猥褻事件の汚名を長く引きずることもないと述べている。
(要約:OFIASインターン 早野文菜)
不祥事調査の為の新組織、発足に向かう(THE 2008年7月31日号)
大学の不祥事調査及び事例の収集の権限を持つ組織の設立が、英国研究委員会(RCUK)からの諮問文書中で提唱された。この新しい組織の目的は、主に教育現場全般の規律を守り、不祥事対処を促進することである。その他、学内からの不満の調査、及び不祥事の事例とそれに対する懲罰資料のデータベース管理、情報提供を行う。
学術出版における倫理委員会(Cope)のハーヴィー・マルコビッチ氏は、こうした組織の設立に賛成している。現在は、事例の包括的な管理体制が未だ存在せず、個々の機関が自身に不利な事例をこっそり隠蔽することも可能である。類似の組織としては英国保健・生体医科学研究公正委員会が存在するが、調査権限は与えられていない。
英国研究公正局(UKRIO)局長のアンディ・ステインソープ氏も外部から調査されるべき問題の存在を認め、組織の設立を歓迎している。一方でUKRIOは匿名の事例データベースを独自に作成することを計画している。
RCUKの諮問文書は、イギリスの各教育機関は、軽微な問題をきちんと調査しておらず、このことは、問題を手に負えなくなるまで放っておく傾向を助長している、と批判している。
海外動向(THE 2008年7月24日号)
Overseas briefing
日本:少子化による打撃
少子化など人口構成の変化と公的資金の減少により、大学は運営の危機に瀕している。今年度の大学入学者はピーク時の1992年に比べ70万人減少した。既に3校が志願者不足により、閉鎖に追い込まれている。
カナダ:無実の解雇教授、訴訟を起こす
アカディア大学教授が、婦女暴行の嫌疑の為に解雇されたことに対し、大学を相手に訴訟を起こした。同教授はある女性に暴行を加えた疑いで取調べを受けたが、警察から無実を証明する手紙を受け取ったと主張しており、大学側の処分を不当であるとしている。
オーストラリア:カーネギーメロン大学、ようやく開校
カーネギーメロン大学アデレードキャンパスが、予定より大幅に遅れて開校となった。同校は立ち上げ資金として政府より2500万オーストラリアドルを受け取っている。また、全生徒に公的資金より22万7千オーストラリアドルが支給される。同大学への援助額はアデレードの他大学に比べ16倍も多い。アレクサンダー・ダウナー外務大臣が、今回のキャンパス開校の功労者である。
インド:「新入生いじめ」反対組織発足
インドの高等教育機関では、精神的嫌がらせや性的暴力を含む「新入生いじめ」が長く根付いており、最高裁も動き出している。デリー大学では、「新入生いじめ」を撲滅し、新入生を守る為の組織が発足した。
アメリカ:メディアを用いた新しいカンニング
学生達が、YouTubeに投稿したビデオ映像を用いてカンニングの方法を共有していることが判明した。こうした映像はカリフォルニア大学のリズ・ロッシュ教授のブログで紹介されている。同教授は、どのようにカンニングをするかではなく、どのように勉強するかを教えるビデオが作れないものかと、自身のブログに書き込んでいる。
インド:「手品学」の学位、出現
11月、カルカッタにて世界初の「手品の大学」が開校する。創立者はマジシャンのP.・C・ソーカー氏であり、心理学、舞台演劇、照明技術などの講座が開講される予定である。卒業生には「手品学修士」の学位が与えられる。
(要約:OFIAS インターン早野文菜)
スコットランドのPost-1992年大学、統合へ向かう(THE 2008年7月17日号)
海外動向(THE2008年7月10日号)
Overseas briefing
カナダ:助成金の大幅削減
大学への助成金が大幅に削減された。1980年代初頭には学生一人当たり21,000カナダドル、1990年代初頭には、17,000カナダドルの州助成金を受け取っていたのに対し、昨年は15,000カナダドルとなったとグローブアンドメール紙が報じた。カナダ大学連盟の調査によれば、カナダの大学への学生一人当たりの助成金額はアメリカの大学より8,000カナダドル少ないという。
インド:デリ大学での入試合格ラインは95%
インドの一流大学の受験競争の激化により、90%以上の正答率でも不合格となる。デリ大学では、人気の高いコースの合格ラインは正答率95%だったという。ハイヤーオーダーシンキングスキルテストの結果が予想以上に悪かったことがこの状況に拍車をかけている。
アメリカ合衆国:国境が大学の結束を分かつ
テキサス州にある大学のキャンパスが国境のフェンスで分割された。同大学はメキシコ・アメリカ戦争の戦場となったリオ・グランデに近く、様々な形でアメリカとメキシコの友好関係を築くことを使命としてきた。この事態に対し、同大学大学の方針を全く無視するものだとこの計画を批判している。
ヨルダン川西岸、ガザ地区:銀行の先駆的な試み 教育ローン制度を整備
ヨルダン川西岸とガザ地区で学生ローンプログラムが立ち上げられた。初の試みで、パレスチナ銀行が資金を提供し、年間8,000人の学生に最高1千万ドルを提供する。世界銀行によれば、この制度は教育ローンを返済するという文化を築くとともに、大学に安定した授業料をもたらすという。
中国:入試不正に関与した政府高官を逮捕
国立大学の入学試験の不正に関与したとして、地方政府高官が逮捕された。政府によれば、偽造登録文書の作成や替え玉受験が行われたという。その中の一人間違えて自分の名前を答案用紙に記入したことから事件は発覚した。
オーストラリア:家政婦のように扱われる非常勤講師
大学の授業の80%を非常勤講師が担っていると報告された。非常勤講師に依存しているというこの状態は、まるでビクトリア時代に中流階級の家庭が家政婦に依存していた状態のようであるという。しかしこの傾向を覆すのは難しいといえる。
(要約:OFIASインターン 前田葉)
イギリス、大卒留学生に二年間の就業ビザ付与(THE 2008年7月10日号)
Two-year graduate visa gives UK prestige a fillip abroad
イギリスの大学を卒業した留学生に付与される就業ビザの有効期間が、従来の一年間から二年間となった。留学生支援団体のUKCISA責任者ドミニク・スコット氏は、留学生は卒業後も本国に帰るよりイギリスで就職することを望んでいるので、この変更は留学生のイギリスへの流入を促進すると考えている。
一方でこの新しいシステムは依然として議論を呼んでいる。より厳しい規則や報告義務が、学生に敬遠されるのではないかとの懸念もある。また、二年間有効のビザの施行によって、大学側は雇用者の理解を得、留学生に多くの就職を斡旋するために、更なる努力をしなければならないとされている。
留学生への対応は、大学にとって、「家内工業」からより大きなビジネスへと変わってきている。そして政府主導ではなく、大学自身がイニシアチブをとるようになってきた。現在イギリスは、留学生から40億ポンドの利益を得ている。イギリスの教育水準は世界トップレベルと言われるが、他国と比較し、今一度その強みを問う段階に至っていると、スコット氏は述べている。
(要約:OFIASインターン早野文菜)
研究費の効果的な使用法(THE 2008年6月26日号)
Spending research grants wisely
会計調達部の協力を得て研究費を効果的に使うには
研究費を獲得することに成功すると、それをいかに有効に使うかという新たな課題が生じる。研究者の陥りがちな罠は、すべて自分で行わなくてはならないと思い込むことだと、大学会計調達事務官連盟のジェニー・ブッシュロッド女史は指摘する。EU法の改正や技術革新などにより、調達自体が以前より複雑化してきているため、各機関の会計調達部と、研究者との連携強化が必要になってきている。
大学の調達担当者からは、具体的に以下のようなアドバイスが寄せられている。
・ 研究資金の出所によって会計方法は様々。特に、会計期限に留意し、早めの計画が必要。
・ 研究費の獲得の後、早い段階で研究に必要なものを明確化する必要あり。
・ 所属機関・EUの会計調達規則の遵守。
・ 調達業者の選定に際し、入札制の採用。営業担当との過度の馴れ合いや癒着の回避。
・ 契約書作成は、研究者もしくは会計調達部主導で。
・ 機材の長期的な維持管理コストの考慮。
・ 説明責任への留意。
(要約:OFIASインターン前田葉)
女性学者、男性優位の学界を批判する(THE 2008年7月10日号)
ゴールドスミス大学のアンジェラ・マクロビー教授は、女性は知識経済において重要な人材であると述べている。そして、今後は単純に女性を数多く大学に送り込むだけでなく、どのような教育を受けさせるのかを考慮する必要があると主張している。
同教授は男女平等の考え方を取り入れる「ジェンダー・メインストリーミング」を、女性の権利の保護には役立っていないとして批判している。
フェミニズムは多くの学術論文で取り上げられているが、「個人的な興味」に留まっており、反感を呼ぶことも多い。「学問の世界は、日常生活の場で取り上げられないことが、議論される場になっている」とマクロビー教授は述べている。
(要約:OFIASインターン早野文菜)
海外動向(THE 2008年7月3日号)
Overseas briefing
カナダ
宣誓する医学研究者
医者は倫理に関する宣誓を行うが、研究者は行ってこなかった。しかし、トロント大学でそれが変わりつつある。そこでは、医学研究者が荘厳な儀式に参加する。その宣誓は、金銭的利益、名声によって研究における倫理が揺るがされないことを含んでいる。
アメリカ合衆国
教授が剽窃で解雇される
コロンビア大学の教授が、剽窃と公的調査を妨害したことにより解雇される。コロンビア・ティーチャーズ・カレッジの心理学と教育学のマドンナ・G・コンスタンティン教授は、元同僚と二人の学生の研究から剽窃したとされている。しかし、コンスタンティン教授は、それらは元々彼女のもので、彼女が黒人であるということで大学は彼女に対し偏見を持っていると主張した。大学は、2月に解雇勧告をしたが、彼女は拒否し、解雇されることとなった。
スイス
コリダーは大災害を引き起こさない
世界で最も強力な素粒子物理学の実験から、地球は危機に瀕していないということが結論された。その研究は、ジェノヴァのヨーロッパ素粒子物理学研究所で、危機を予測できるかどうかに触れている。批評家は、まもなく開設される、陽子を超高速で衝突させる施設に作られた小さなブラックホールが地球の存続を脅かすのではないかと懸念を示しているが、ヨーロッパ素粒子物理学研究所は、確認できる危険はない、としている。
アメリカ合衆国
銃撃を想定した訓練を職員が受ける
「サバイバル・トレーニング」が、アメリカ合衆国の大学で標準になりつつある。クロニクル誌高等教育版と国中の銃撃想定を促す機関によれば、サバイバルトレーニング市場は、熟している。現在、50以上のカレッジが元合衆国防衛省の専門家によって開発されたプログラムに申し込んでいる。
インド
「偽もの」であることを否定する大学
インドの高等裁判所は、政府の委員会と「偽もの」とされた大学との調停を行った。インディアン・インスティテュート・オブ・プランニング・アンド・マネージメント(IIPM)の弁護士は、IIPMは企業家に価値ある経営訓練を提供しているし、「世界中で」認知されていると主張している。
ウガンダ
不品行阻止のためのミニスカート禁止
ウガンダのマケレレ大学では、講師が成績の見返りとして、性交渉を求めているというallAfrica.comによる報道に対し、学生と職員の道徳を高めるために、ミニスカートや「不適切な」装いを禁止した。心理学学部長ピーター・バグマ氏は「ミニスカートやタイツを撲滅することにより、不品行を奨励しない新たな文化に、学生が対応できるようになる」と述べた。調査によると、この大学の10人中4人の女子学生が、講師から性的関係を要求されたという。しかし、大学の若い職員は、女性の露出度の高い服装は、男性に対するセクシュアル・ハラスメントであると述べている。
(要約:OFIASインターン藁科智恵)
評価を上げ批判を避けるよう圧力をかけられる外部審査員(THE 2008年6月26日号)
External examiners under pressure to uphold marks and avoid criticism
研究者は、外部評価システムが弱体化しており、もはや目的と合致していないという危惧を表し始めている。バッキンガム大学の政治学、現代史のアルダーマン教授は、マネージャーが研究者に対し、大学の評価を上げるために、成績の悪い学生の成績を上げるように圧力をかけているとして告発した。
このアルダーマン教授の告発がきっかけとなり、他の研究者によっても、外部評価システムが弱体化しているさまざまな例が挙げられた。
ある研究者は、外部評価委員会に参加し、自分の機関では不可を付けるような答案に対し、優がつけられていたが、それを変えること権限は自分にはなかったことを述べ、大学が無責任な学生評価を行っていることを指摘した。
ある大学では修士課程の部長が、低い評価を与えた外部評価委員を解雇するように圧力をかけたという。
このような現状に対しアルダーマン教授は、学的水準を保つために外部評価システムを廃止しなくてはならないと述べた。
(要訳:OFIASインターン藁科智恵)
ブラッドフォード大学、人種問題調査団を迎える(THE 2008年7月3日号)
Bradford calls in external race adviser
ブラッドフォード大学保健学部が、学内において人種差別問題が存在することを認め、この調査のため、専門の調査団を迎え入れた。
同大学は、看護学科の教授二人に対する人種問題について謝罪をした。マーク・クリアリー副学長は、「人種差別の結果、彼らにつらい思いをさせてしまったことを、深く謝罪する」と述べている。
大学における人種差別撤廃を唱えるアーチボン教授は、2000年より、同教授とその他5名の教授に対する人種差別について訴えていた。2007年には委員会の調査も行われたが、人種差別の事実は認められなかった。しかし2008年1月、上訴委員会によってこの決定は覆され、今回、副学長が謝罪するに至った。元看護学科長で、現在ハダーズフィールド大学保健社会福祉センター長のアニー・トッピング教授は、人種差別行為を行ったとして、委員会に非難されている。
大学における人種差別撤廃と雇用機会均等を提唱するロジャー・クライン氏は、外部より調査団を招いた副学長の決断と、謝罪を賞賛している。
(要約:OFIASインターン早野文菜)
ラベル: イギリス, ブラッドフォード大学, 人種差別
海外動向(THE 2008年6月26日号)
Overseas briefing
オーストラリア
研究開発の支出が25%の伸び
オーストラリア大学の研究に対する支出が近年伸びている。オーストラリア統計学事務所のデータによると、研究開発に対する支出は2004年から2006年にかけて24.9%伸びている。この伸びは、医学的研究に対する予算の増大が影響しており、2010年までには、国立医学健康研究センターに対する資金は15年間で500%増大することになるだろうとオーストラ
リアの新聞は報じている。
イラン
性の主張に対する抗議
副学長のセクハラの主張に対して、イランの大学で何千人もの学生による抗議が行われた。先週、ザンジャン大学で、理事会の辞任を要求する約3000人が参加する座り込みが行われた。また、彼らは女子学生に対するハラスメントに対しての高等教育大臣の公式の謝罪を要求している。
アメリカ合衆国
動物の権利保護運動が拡がる
動物実験に関わる大学に圧力をかけることを目指し、生体解剖反対の運動家によって、合衆国の研究機関でない高等教育機関が攻撃の的になっている。彼らの新しい戦略は、最近11の非研究機関によって署名された、動物を深刻な苦痛にさらさないという誓約を含んでいる。動物愛護協会によって起草されたその誓約書は、300の非研究機関に送付されている。ザ・クロニクル高等教育版は、これは、高等教育機関の中から、動物権利保護運動を盛り上げようという意図だと報じている。
アメリカ合衆国
詐欺師の贈り物が戻される
大学に対する50万ドルの寄付が詐欺師の元に戻された。去年銀行の破産の前日に自殺したボブ・マックリーンは、ミドル・テネシー州立大学に彼の6700万ドルの遺産のうち100万ドルを寄付していた。出来る限りのお金の回収を目指す裁判所職員は、大学に57万ドルを返還することを要求した。
中国
試験での不正行為の数減少
中国政府によると、世界で最も大規模な大学入試における不正行為の数が減少したという。今年は1038万人によって受験され、2645の不正行為が発覚した。この数は、去年よりも約800減少しており、ここ10年間で最も少ない。教育相のスポークスマンの王氏によると、今年は学生のIDのチェック強化、試験監督の増員等を行ったという。
インド
社会的教養に欠ける政治家
インドの研究者は政治家を国の中で最も非社会的なグループとした。インド調査センターの社会的教養の調査は、インドの大学の1100人の研究者によって行われた。結果として、インドの政治家の社会的教養は、ジャーナリストや学校の教師よりも低い、「極めて低い」とされた。ある研究者は、エコノミック・タイムズ紙に政治家はしっかりした教育を受けていなく、政策を作る人々がこのような状態であることを嘆かわしいことだと語った。
(要約:OFIASインターン藁科智恵)
学校の成績が大学への進学の鍵(THE 2008年6月19日号)
School grades are key to university achievement
英国在住で、2004-2005年にかけて18歳になった公立学校に通う60万人の生徒の学術到達度の調査の結果、成績が考慮に入れられれば、より劣悪な社会経済的環境にある生徒も、よりよい環境にいる生徒と同じように進学し、同じレベルの大学に進学する傾向にあるということが明らかにされた。
ロンドン大学の教育、財政学の機関に所属する研究者たちは、貧しい生徒は、より達成度の低い中等学校に進む傾向があり、学校レベルでの達成度に対する取組みが大学進学率を高める上で鍵となるとした。
アンナ・ヴィグノールズ氏は、この研究により貧しい環境にある生徒は大学に行かない傾向にあるということが明らかになったが、この点が重要であると述べている。調査により、より貧しい学生は大学を中退する傾向にあることも明らかにされた。
この研究は、抽出ではなく、11歳から19歳の生徒集団を追跡調査した高等教育への参加に関する初めての調査である。
(要訳:OFIASインターン藁科智恵)
海外動向(THE 2008年6月19日号)
Overseas briefing
ガザ
イスラエルが7人の学生を米国への出国許可
米国で勉強するためにガザを離れるパレスティナ人学生への制限が強化された。フルブライト奨学金を得た7人の学生はその機会が奪われそうになったが、イスラエルは、特別な出国許可を出すことに同意している。しかし、海外の奨学金を受けたにもかかわらず、出国段階で足止めされている学生が何百人にも上るとニューヨークタイムズは報じている。イスラエルの政府職員によると、限られた数の出国許可は出されるだろうが、およそ600人の学生が出国出来ないことになるだろうとしている。
オーストラリア
ニュー・イングランド大学の副学長アラン・ペティグルー氏は、同大学学長ジョン・カシディ氏によって「昇任」を提案された後、信任投票を受けた。両者はペティグルー氏が学長によって推進されてきた変化の速さに対し反論したことから、険悪な関係になっていた。カシディ氏は、あるインタビューにおいて魚を売るのも、フライドポテトを売るのも、教育を売るのも同じだと発言し、研究者の反感を買っているという。
アメリカ合衆国
殺人隠蔽に対し35万ドル
2006年12月22歳のローラ・ディキンソンがイースタン・ミシガン大学のキャンパスの宿舎で死体で発見され、検察は21歳の男性を殺人の容疑で起訴し、終身刑となった。大学がキャンパスにおける安全情報の開示という州の法律に違反したとして、同大学は35万ドルの罰金が科された。
中国
卒業生の財布を狙う大学
Forbes.comによると、中国のエリート大学は、今まで公的資金と学費だけで運営されてきたが、初めて卒業生の寄付を募り、「寄付文化」を発展させようとしている。フダン大学は、収入の5%を卒業生から得ている。
インド
女性のためのIIT計画の大学機関
女性だけの科学技術の教育機関の計画が進行中である。IITは、工学技術のような分野においての国の技術基盤を強化しようという動きの一部である。科学技術は、いまだにインドにおいて男性が支配的な領域であり、女性は10%を占めるのみである。IITカンプールの教授は、女性だけの教育機関を作ることにより、キャリアとして科学技術を選択する女性が増えればと語っている。
アメリカ合衆国
密通により講師が解雇
アリゾナ州パラダイス・バレー・コミュニティ・カレッジのマイケル・トッド氏は、同機関の学生アンドリナ・ツィーグラー氏(19)が、トッド氏の自宅でコカインの多量摂取により死んだことにより、停職処分を受けていた。警察は、トッド氏は、彼女の死とは関係ないとしたが、大学の運営委員会は、学生との恋愛関係を禁じている学則に違反したとして、トッド氏を解雇した。
(要訳:OFIASインターン藁科智恵)
より高いIQは研究者を無神論者にする(THE 2008年6月12日号)
High IQ turns academics into atheists
インテリジェンス誌に、ウルスター大学のリチャード・リン教授による、高IQと宗教的信仰の欠如には強い相互関係があるという記事が掲載される。同教授は以前、知能と性別と人種間の関係の研究によって議論を醸している。この記事で、リン教授は知的エリートには宗教的信仰を持った人が少ないと述べている。
リン教授がTHEに語ったところによると、ほとんどの西洋諸国では20世紀に入り、人々がより知的になるにつれて、宗教的信仰の低下がみられているという。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミックスのアンディ・ウェルズ講師は、この二つの間の相互関係は因果関係であるとはいえないとしている。
ロンドン大学の宗教と現代社会研究センター長のゴードン・リンチ氏は、宗教的信仰の低下は、より広い社会的・経済的・歴史的観点から捉えられる必要があり、宗教が原始的だという単純化は、生産的ではないとしている。
リーズ大学神学部アリスター・マックファドイェン講師は、リン教授の主張には西洋文化帝国主義とアンチ宗教の感情が表れていると述べている。
(要訳:OFIASインターン藁科智恵)
海外動向(THE 2008年6月12日号)
Overseas briefing
米国
医者の特典が調査される
米国の医学部は、医薬会社から医者や研修生への賄賂を規制できていなかったことに対し、批判を受けている。ニューヨーク・タイムズに掲載された米国医学部学生組合によれば、5校に1校の割合で利害の衝突に関する方針を見直しているが、いまだにほとんどがガイドラインを明確にしていない。
オーストラリア
批評が研究を麻痺させる可能性
オーストラリアの研究者のグループは、政策批評が、ラッド政権の研究・教育に対する怠慢を引き起こしかねないと警告した。オーストラリア科学アカデミーのカート・ランベック氏は、批評の専門分野は飽和状態にあると述べている。
オーストラリア
言論の自由を守る組合
メルボルン大学は、政府職員に侮辱的な発言をした講師に対し懲戒処分を行ったことにより、労働組合から、非難を受けている。エイジ紙(The Age)が入手した資料によると、大学は、政府に対し、大学の総意と講師の非難とは全く別だということを書面において述べている。
カナダ
学生がフェイスブックを告訴
カナダの法学部学生がフェイスブックを訴えた。オタワ大学の学生は、ソーシャルネットワーキングサイトが、会員に個人情報が第三者の営利団体に公開されるということを知らせておらず、その許可もとっていないと主張している。彼らによれば、フェイスブックは、22のカナダの個人情報法違反を犯しているとされる。
欧州委員会
EU全域のスキームに対する熱意に欠ける反応
ケミストリーワールド誌によると、研究者の一元的な市場を作り上げることに対する欧州委員会の計画は、熱意に欠けた反応を得ている。研究者ヨーロッパ組合は、年金等を各国間で移動できるという計画も提案している。ドイツ研究基金のフェルディ・シュス氏は、移動性が上がったとしても、それによって研究の質が良くなるとは考えていないと述べている。
オーストラリア
賃上げによる解雇
研究者組合による27%の賃上げ要求に応じるならば、オーストラリアの大学は研究者を書き子する必要が出てくるとしている。組合は、ここ3年間賃上げを要求している。
(要訳:OFIASインターン藁科智恵)
任期制研究者の歴史的勝利(THE 2008年6月5日号)
Historic win for fixed-term employee
法廷は、いくつかの任期制契約によって9年間継続して研究者を雇用していたアバディーン大学に対し、終身契約を否定する客観的な理由がないとした。大学は、任期制契約に対する資金の不定性を理由に挙げているが、それは理由にならないとされた。
アンドリュー・ボール氏は、動物学の研究者で、1999年からアバディーン大学にいくつかの契約で継続して雇用されていた。先月終わることになっていた契約をもって、自らのポストを終身雇用にすることを大学側に要求した。アバディーン大学では研究者の8%のみが終身契約であり、生物学では97%が任期制契約であり、この割合は例外ではない。ボール氏は、大学連合の支援を得て、この問題を法廷に持ち込んだ。
大学連合は、この勝利を足掛かりとして、他の雇用者に対しても行動を起こしていきたいとしている。
(要約:OFIASインターン藁科智恵)
学生との過度に正式な契約に要注意(THE 2008年4月24日号)
Academic lawyer cautions on use of overly formal student contracts
学生との契約を過度に公式にして法的に身動きができなくなるような状態は避け、大学は一定の柔軟性を維持すべきであるというアドバイスが出された。
イギリスでは現在9校の大学が学生契約を採用しており、他17校がその導入を考えている。
大学の運営における弁護士や法知識の重要性は否定できない。学生が訴訟を起こした場合や、論争を解決する際にはそういった契約が役にたつであろう。また、学生が自分達の知的財産権を主張した際大学としてのスタンスを示すのにも必要となってくる。
しかしながら、17歳や18歳の学生達は、契約を結ぶには若すぎるという問題点も指摘されている。
海外情勢(THE2008年4月24日号)
Overseas briefing
インド:積極的差別制度に支持
カースト制度が高等教育を受ける機会に与えている影響を減らそうという制度案が上院にかけられている。伝統的に職が制限されてきた「アンタッチャブル」の人々の状況に改善をもたらすこの積極的差別システムにより、インドの公立大学の定員の半分近くが低いカーストへ割り当てられる。一方、学問の質への悪影響や学生が成績に基づいて評価されないことに関し批判の声も上がっている。
米国:大学での発言の自由騒動
研究者に対し研究室のドアに貼られていた中絶やイスラムテロに関する漫画を外すよう命じたミシガン州のレーク・スーペリアー大学が非難を浴びている。「教育における個人の権利」基金によれば、他大学が寛容であったのはリベラルか左派的なものの掲示であったという。基金の代表は「公共の圧力へ従順であることによって起こる明確なダブルスタンダード」ではないかと述べている。
オーストラリア:高等教育を襲う雇用熱
資源ブームで雇用熱が高まり、非熟練職の賃金が上がった結果、大学が4,000人の定員割れを起こしている。大学関係者によれば、人口が増加している一方で大学へ入学する18歳人口が減っており、大学は需要を満たすために柔軟さを必要とする局面にあるという。
ガザ:イスラエルによる燃料カットで大学閉鎖
深刻な燃料不足により、地区内の主要大学4校が閉鎖された。AP通信社によれば、45,000人の学生が影響を受け、出席率が60%落ちたという。イスラエルからの燃料供給削減によるこの事態は交通費の高騰にも繋がり、住民のほとんどが一日2ドル未満で生き延びる現状の中、以前は1.7ドルの道のりが今では4ドルとなった。
米国:メールをめぐって教授が講義を中断
「大学での規律ある態度とは」という議論に火がついている。これは哲学の教授が、授業中にメールをやり取りする学生を見て講義をやめたのが発端である。黒人研究者として、民族的マイノリティの学生によるそのような行為に失望したというが、教室での学生行動の専門家は「モラルの観点から見て、集団的処罰というのはまずいのではないか」と言う。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
文化を知って盗用問題に立ち向かう(THE 2008年4月24日号)
Cultural insight can help tackle plagiarism.
中国人留学生によくある盗用の問題に対応するには文化の違いを理解しなければならない。それまで生涯かけて学んできた学習方法を捨て、欧米で勉強することは中国人留学生にとってかなりの負担であると広東外語外貿大学の教授が述べた。
「個人による主張や知的財産権のない中国文化にとって盗用は未知の概念である。知識は一握りの特権階級のもので、誰が何を言ったか皆が知っており、その情報源についての疑問はもたれない」
「賢者」の発言を、参照提示せずに利用することは中国では普通のことである。欧米では二次的資料をサポートとして利用し、自分の意見を述べるかもしれないが、「中国では、新たな主張を行う者は個人主義者だとして罰せられることもありうる」のだ。
特定のグループのみを「危険だ」とするステレオタイプをリーズ大学のアドリアン・スレイター氏は批判している。
盗用問題を考えるにあたっては、自分の意見を再利用する「自己盗用」や、公有財産の利用、評価済みの課題のまた借りなどにも注意しなければならない。ネット上で資料に簡単にアクセスできるようになったこともあり、性悪説をもってして学生に対応しなければならなくなった。
(要訳:OFIASインターン 山下梨江)
つまづくエジプト大学との共同ベンチャー(THE2008年4月24日号)
Egyptian joint venture falters
英国・ラフバラー大学とエジプト・ブリティッシュ大学の関係が、学部生単位認定問題で揺れている。両大学はより広いパートナーシップを視野に入れた単位互換制度について昨年9月に合意したが、その3ヶ月後から様々な問題に直面している。ブリティッシュ大学側に、学生の管理・分析不足、学生の移動や再評価情報のシステマティックな収集・蓄積の不足、英国出身教員をフルタイムで雇用出来ないことによる学生への悪影響が見られ、更には図書館やIT設備にも問題があるという。
本来は博士課程の学生の指導をブリティッシュ大学と共同で行うことを視野に入れていたラフバラー大学だが、学生受け入れに足るインフラをブリティッシュ大学が持っているかどうかの査定が必要であり、今後もモニタリングと再評価を行うという。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
英国教員連合のパレスチナ援助に非難の声(THE2008年4月17日号)
UCU under fire for Palestine donation
英国教員連合が2000ポンドをパレスチナ自治区ヨルダン川西岸のビールゼイト大学へ寄付したことについて議論が巻き起こっている。この寄付に関して連合側は、連合のポール・ベネット国際部門長が持つビールゼイト大学との緊密な関係を活用して昨年度行われた共同プロジェクトに対する対価であると説明している。
一方でシェフィールド・ハッラム大学法学部教員のレズリー・クラフ氏によれば、これは「利害の争い」であるという。この寄付に反対して連合メンバーを降りた彼女は、教育・トレーニング目的に使われるべき慈善資金が住居や移動費に使われたことを暴露した。来月の連合年次総会においてイスラエルの大学の学術的ボイコットに関する議論を予定しているだけに、この対照的な動きは特に慎重に扱われるべき問題となっている。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
海外情勢(THE2008年4月17日号)
Overseas news
カナダ:新しいEメールシステムにスパイの恐れ
米国を経由する新しいITシステムを導入すると米国の当局がEメールをチェックするのではないかとカナダのレークヘッド大学の職員が心配している。Googleに委託したシステムなので、個人情報をEメールで送らないように大学は職員や学生に注意を呼びかけている。
オーストラリア:短期契約の職員達
オーストラリア全国高等教育連合によるとオーストラリアの大学に勤務する研究者の約80%が短期契約だそうだ。現在1万人、中には30年以上そのステータスで研究を続けてきた研究者もいる。「元来研究者の多くは自分の研究に夢中で、労働環境について考えたりしないが、よりよい雇用条件を求める声はあがってきている」と連合のケン・マッカルパイン氏は指摘する。
米国:ひげの学生がFBIに…
大学のプロジェクトで養鶏場で写真をとっていたジョージア大学の学生とその指導教授がFBIののテロリズム合同特別捜査班尋問にあった。長く黒いあごひげのせいで過去にも中東系と間違われ、警察にとめられて質問にあったことがあるという。
インド:アフリカに教育資金
インド・アフリカサミットで、パン・アフリカ高等教育機関を設置し、アフリカの開発を推進するとインドのマンモハン・シン首相が宣言した。特に、科学、情報テクノロジー、職業教育分野に焦点をあてること、そしてインド国内のアフリカ人学生に対する奨学金を増やすことも約束した。この動きは中国のアフリカ政策に対抗するものだと見られている。
中国:多くの留学生が中国へ帰国
留学後、自国に戻る中国人留学生の数が増えている。中国教育省によると、2007年に留学をした約44,000人が中国へ戻ってきた。1978年から2007年の間に約120万人が留学し、約32万人がその同期間中に帰国している。現時点で、65万人の中国人学生が海外の大学に在籍している。
(要訳:OFIASインターン 山下梨江)
大学は社会人をターゲットに(THE2008年4月17日号)
Institutions urged to target adult workforce
高等教育は成人就業人口1000万人を引き入れるべきである、とする文書「仕事と高等教育」が高次スキル増進戦略と併せて英国政府から出された。大学に対し、雇用ビジネスで活躍し、ビジネス・高等教育間の人材を流動化させ、学生を仕事の世界へ誘導するよう求めている。
これに基づきイノベーション・大学・職業技能省も高等教育に関心を持つ就業人口に関する調査を行い、高等教育機関は従来の学生とは異なる層を取り込むべきであると報告している。政府は、「短期コースを強化することにより実践誘導型教育を設置、セクターを横断して社会人に働きかけるプログラムを準備し、それをセクター・スキル委員会(SSCs)SSCsが雇用者側へ売り込む」計画を約束しているという。また社会人の高次スキル・トレーニングの費用を雇用者の寄付で賄うこと、更には雇用側の内部トレーニングへ高等教育機関が参入することの認定も視野に入っており、この点に関しては高等教育財政審議(HEFCE)がSSCsのアドバイスを受けるよう求められている。
大学側は懸念を示している。シンクタンク「ミリオン・プラス」は、SSCsのような複合納入メカニズムは大学が雇用側とやり取りするにあたって頼りになりそうもないと言う。大学連合もまた、大学のコースにビジネスが多大な影響を及ぼすこと、対象本位の高等教育姿勢に反対を示している。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
ラベル: HEFCE, SSCs, セクター・スキル委員会, 社会人, 生涯教育
大学院への進学(THE 2008年4月10日号)
Wider access remit urged
家族に高等教育を受けた者がいない学生やローンに悩む学生の多くが、学士取得後大学院に進学しないことが高等教育学会の最近の調査でわかった。
大学院へ進学しない学生のうち、ローンの返済が問題と答えたのは13%であった。特にマイノリティの学生は、進学を強く望みつつも、借金をすることに不安を感じている。
理論構造のコースをとっている学生が大学院で勉強することが仕事先で役立つと考える一方、実践的な資格をとる学生は、更なる高等教育よりも職場経験のほうが役にたつと考えている。
勉強にストレスを感じる学生が増加する中、大学院に進むのは留学生が多く、国内の学生の進学率をあげるべきであると指摘されている。
「学部の最終年次で、進学するかどうかという難しい決断を行う学生をもっと支援しなければならない」とキングストン大学の副学長代理は述べている。
(要訳:OFIASインターン 山下 梨江)
ラベル: 大学院進学
教育品質保証監視機構、「落第生のデータ活用を」と訴える(THE2008年4月10日号)
Make better use of dropout data, quality watchdog urges
高等教育の質の監視を行っている品質保証局(QAA)が、落第した学生に関する統計をサポート体制改善のために採用する大学が少ないとするレポートを発表した。これは、今年の下院公共会計委員会において、8億ポンドが配分されているにも関わらず落第率が5年間変わっていないことが指摘されたことを受けている。
委員会では、サポートを必要とする学生の成績を追跡調査するために、落第率に関する情報を大学が活用することが重要であることが指摘された。またQAAの分析では、多くの大学が妥当な量の情報を集めてはいるものの「それをどうすればいいのか分かっていない」という。
一方でこのレポートは、幾つかの大学を模範例として取り上げている。例えば平均よりも落第率が高いものの年次レポートの発行で表彰を受けたボルトン大学では、学部を超えてデータ収集を一本化するシステムを開発した。これにより信頼に足るデータが集まり、分析段階で疑問点があれば教員が質問できるようになった結果、学生の進級や落第のパターンや相違点を知るとともに組織全体を見ることが可能になったという。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
海外情勢(THE2008年4月10日号)
Overseas briefing
インド:もっと学生を受け止める力を
新設大学への投資の増加で海外の大学へ留学してしまうインド人学生たちの流れがとめられないか。インドの政府、産業、教育関係者は留学の増加による資金の海外流出を心配している。能力を伸ばせないとしてインドを離れる学生を引き止めるために「民間からの援助が必要不可欠である」と教育省は述べている。
米国:成績提出の遅れに罰金
フロリダ州立大学では、生徒の成績提出が遅れた教員に対して毎回10ドル(約千円)の罰金を科している。毎回10-15%の成績提出の遅れに悩まされていた同校は、現在、米国で唯一罰金を科している大学である。
中国:学生へご飯を配給
台湾から近い沿岸地域にある厦門大学では、高い生活費に苦しんでいる学生たちに大学からお米が支給される。消費者物価指数の高い中国の都市で生活費が上がるに伴い、授業料はすえおきで、低所得の家庭から来ている学生を援助するためにご飯配給政策を導入したそうだ。
オーストラリア:開かれた奨学金
オーストラリアが、最高14万豪ドル(約1300万円)のフェローシップを与えることで中堅研究者を引き付けようとしている。産業科学研究省のキム・カー氏は「自国の研究者を保護しながら、ビジネスを国際的に競争力のあるものにすることはできない。私達の目標は世界最高の研究者を引き付け、私達にかかわる問題のために働いてもらうことである」と述べた。
米国:ネイティブアメリカンによる訴訟
ノースダコタ大学女学生クラブの学生達が「カウボーイとインディアン」というテーマのもとインディアンの服を着た写真をオンラインで投稿したことに対して、ネイティブアメリカンの学生グループが大学に訴訟を起こした。彼女たちは謹慎処分を受け、またこの訴訟に駆られ「ファイティング・スー族(米国先住民の主要種族の一つ)」と名のついた大学競技チームに対しても、反対運動が起こっている。
日本:少子化で大学が経営破綻に
広島にある立志館大学が、戦後日本で初めての大学経営破綻で閉鎖された。日本の18歳人口は1992年の205万人から2008年には130万人にまで減少している。「大学は授業料をカットし、設備を改善し、学生を引き寄せなければならない」と同大学の管理者は指摘している。
ばらまき型研究資金が米国で増加(THE2008年4月3日号)
'Pork-barrel' cash on the rise in US
米国ではピアレビューなしに配分される助成金による研究プロジェクトが、立法側の削減公言にも関わらず16億ドルにまで記録的に増加し、物議を醸している。この研究資金はアメリカ連邦議会議員によって議員の選挙区へ分配されているうちの3分の2を占め、全米の研究資金総額の5%にあたる。また、政治的に繊細な研究分野、例えばイラク戦争関連では脊髄損傷に関する医療研究、石油価格上昇関連ではバイオ燃料研究などへの集中が見られるという。
1998年から2003年にかけて急激に増加していたピア・レビューつきの競争的資金はここ5年間で減少しており、議員による分配が、資金調達競争を限定することで研究を弱体化させ、米国経済にも影響が拡大するとして批判が起こっている。しかし現実では、大学側の要望に合わせて今後7年間に自然科学・物理学への融資を倍額にする「競争するアメリカ」法が連邦議会に承認されたものの、最終予算案では融資額が4分の1以上も削られている。また大学側も、資金困窮の際地元議員に配分を依頼する体質から抜けきれていないという。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
世界の学者たちがトップ学術誌を支持(THE 2008年4月3日号)
International scholars agree on standing of top journals
オクスフォード大学政治学部のマクリーン教授は、研究評価(Research Assessment Exercise, RAE)においては政治学学術誌ランキングが参照されるべきであると主張している。
それに対して、英国高等教育財政カウンシル(Hefce)は学術誌ランキングを使うことをRAE部会に禁止し、かわりに査読によって研究評価を行うようにとした。学術誌ランキングの問題点として、主要3カ国に特化しすぎていることなどをあげている。
マクリーン教授は「批判もあるが、国際的な学術誌のランキングは安定した統一見解を見せている」と述べ、また、よくある同姓による混同や、お粗末にもかかわらず引用される研究があることによる影響も避けられるとして、査読よりも優れていると指摘した。
(要訳:OFIASインターン 山下梨江)
アウトソーシングの落とし穴を警告される大学(THE2008年4月3日号)
Universities warned about the pitfalls of outsourcing
今週行われた、今後10年間の大学の課題に関する会議において、高等教育コンサルタントのローズマリー・スタンプ氏は「変化に自ら対応することなくサービスを外注する大学は教員採用や大学の評判、学生の教育への関与力を失う」と指摘した。「大学がギブアップしてしまったコントロールと、大学運営がテクノロジーから遅れを取っているために取れなかったコントロール」の両方が問題であると言う。
前者に関しては、コースのモジュール提供など、学生の教育に大きなインパクトを持つサービスを民間へ委託していることが一つの例である。大学よりも機敏に学生のニーズを掴む外部によるサービスは学生から高評価を受けており、「高等教育における経験が大学のコントロールを超えていく」という。後者に関して言えば、大学の評判についての情報探しに先ずウェブを使ういわゆる「グーグル世代」への対応という課題である。
セミナーでは教員の雇用や確保の問題も言及され、スタンプ氏によれば「これは今後10年間の最も大きな課題の一つであり、全ての研究機関が直面している。グローバルな教員の採用が困難になり、戦略的目標を達成するため多くの大学が他セクターから人材をスカウトしようとしている」という。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
海外情勢(THE2008年4月3日号)
Overseas briefing
米国:機関によって異なるジェンダーギャップ
米国高等教育機関における男女間の所得格差は、教える科目ではなく、所属する機関のタイプによって異なることが調査によってわかった。472の機関の8千人の研究者を調べたところ、研究基金を欠いている公立大学や修士レベルまでしかない大学に女性研究者が集中している。
しかしながら、それを除いても、研究者の男女間で4.2%の不明な給与の差がある。
オーストラリア:認証評価不合格のコース
ウロンゴン大学での4年間の幼児教育コースの評価結果を受け、3つの他大学が、自分達の12ヶ月学位コースを再編成すると公表した。オーストラリアの新聞によると、小学校で教えるには卒業生の能力が不十分であるとして、ニュー・サウス・ウェールズ教育機関がウロンゴン大学のコース認定を拒否している。
中国:教育の値打ち
10人に4人の中国人が教育への投資とその見返りの間に大きなギャップがあると思っている。都市と農村地域に住む16歳から60歳までの市民3,355人に調査を行ったところ、見返りがよいと答えたのはたった16%であり、大学卒業者達は最も批判的であった。
「『教科書のメリット』は労働市場においてなんの役にも立っていない。経営修士コースのために3000人民元(約4~5万円)払ってくれた両親に申し訳ない。」とある青年は嘆いた。「近年の経済発展のペースに雇用市場における求職がおいついていない」と北京師範大学の経営学教授は指摘している。
オーストラリアと米国:解けた化石の秘密
オーストラリアと米国の古生物学者たちが5億5千万年ものミステリーを解明した。南オーストラリアのフリンダースレンジスで発見され、化石化した糞だと思われていたチューブのような化石が、実は海の生物であったことがわかった。
インド:化学分野での詐欺行為、波紋広がる
化学分野における最も深刻な学術盗用の波紋がインド全土の大学に広がっている。70以上もの学術論文で盗用やまたは不正行為をしたとしてシュリ・ベンカッテシュワラ大学(SUV)の化学教授であったチランジーヴィ教授が有罪となった。
そして今、疑惑のある論文を共著したベテラン教授に注目が集まっている。SUV大学副学長は徹底的に調査することを誓い、著名なインド人化学者ガバダーン・メータ氏はデータを審査せずに論文に名前を載せる学者達を批判している。
(要訳:OFIASインターン 山下梨江)
無利子学生ローンで得をするのは金持ち (THE 2008年3月27日号)
Top earners gain from student loan ‘subsidy’ as low-paid struggle
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の公共経済学教授ニコラス・バーは、「中流階級向け補助金」である無利子学生ローンを廃止し、現在3,000ポンド(約60万円)となっている授業料上限を引き上げるべきであると主張している。
「授業料の上限設定はあるべきである。但し、あるレベルにまで引き上げてそこで固定することが重要だ。要はバランス感覚である。授業料の上限をなくしたり、または高くしすぎたりすると、米国のように際限のない授業料設定をする大学が出て、非効率・不公平につながる。問題は、ローンの利子補助金で利益を得ているのが貧しい学生ではなく、金融セクター勤務の金持ちたちであるということだ。ターゲットを変え、教師、看護師、医師などの公共サービスに従事するものたちのローンを帳消しにすべきと私は主張したい」
しかしこれに対する意見として、授業料上限を引き上げあげることによる政府補助金の削減、学生の視点で大学を見ることで教員や機関との関係に変化が生じうる、等々問題点を指摘するものたちもいる。
(要訳:OFIASインターン 山下梨江)
英国へのインド人留学生、24%増加(THE 2008年3月27日号)
UK sees 24% rise in Indian students
英国におけるインド人留学生の数が2006-07年度比で24%増加しており、英国大学協会長リック・トレイナー氏が傾向を歓迎している。そのほかナイジェリアやパキスタン、またEU内ではポーランドからの留学生の数が顕著に増えている。
その一方留学生が英国で勉強することを支援する政府奨学金の削減問題が指摘されている。「何の話し合いもなしに支援金を削減する政府に、大学側はもううんざりしている。国際情勢が不安定な今、最悪の場合、英国が留学生に敵対的であると思われるかもしれない」と「影の高等教育大臣」であるロブ・ウィルソン氏は述べている。
(要訳:OFIASインターン 山下梨江)
教務課曰く「才能ある非研究者が副学長候補として見落とされている」(THE2008年3月27日号)
Talented non-academics overlooked for v-c posts, says registrar
大学業務の複雑化に伴い財務管理や経営企画の経験を求められる副学長の登用に関し、大学は雇用対象を学問的背景にこだわらず拡大すべきである、という意見がエグゼター大学で上がっている。
今週行われる高等教育リーダーシップに関するシンポジウムで提出される論文において、デヴィット・アレン氏が、学歴ではなく才能に依って登用された人材へも「経営トップへの道」を開くべきであると問題提起を行った。また、学者要員のみでは幹部候補者を補填しきれないのではないかと、疑問を投げかけ、「経営にプロとして従事できないCEOが組織を運営するリスクにどれだけ耐えられるか」と警鐘を鳴らしている。
一方で大学長委員会の書記官であるデヴィット・フレッチャー氏は、候補者範囲を拡大する必要性を認めながらも「学者外からの候補者が見つかりにくいことが難点だ」とコメントした。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
専門家:「海外の活動をミッション遂行の財源に」(THE2008年3月27日号)
Use overseas arms to fund mission, expert says
2006年に中国の西安交通大学と共同で新大学を設立したリバプール大学のケルヴィン・エヴァレスト学務長が主張するところによると、英国の大学が「大学がなすべきこと」を今後も続けるためには、海外拠点やオンラインコースの開設という分野で成功する必要があるという。
彼によれば「現時点で英国の教育は頂点に立っており、我々が提供すべきものの恩恵を受けることを世界中が渇望している。市場は英国のどの大学にとっても十分に広い」。一方で彼は海外活動を稼ぎ頭として使うことには否定的であり、「成功すれば研究と教育の支えになるが、失敗すれば評判が大きく失墜するだろう」と述べている。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
カウンシルでの過半数を失うケンブリッジの研究者たち(THE 2008年3月20日号)
Academics lose majority on Cambridge council
ケンブリッジ大学のカウンシルにおける外部メンバーを2名から4名に増員する旨提案に対する投票が今週行われ、3分の2が賛成票を投じた。これでカウンシルのメンバーの全体数は24名となり、うち大学教員メンバーは12人のままのため過半数を失う。
但し追加投票において大学教員が外部メンバー候補を選定することとされた。この変更は、評議委員会の半数以上の賛成により規則改正への投票を提案出来る、という大学の規則に基づき、研究者による自治の保護手段として提案された。それでも、研究者による自治侵害を危惧する声も上がっている。
オックスフォード大学と同様、ケンブリッジ大学は高等教育財政審議会(HEFCE)から納税者に対する説明責任を求められている。オックスフォード大学では昨年、外部メンバーをカウンシルの過半数とす改革案を大学教員たちが否決している。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
ラベル: HEFCE, オックスフォード大学, カウンシル, ケンブリッジ大学, 自治
上司に評価の厳しい大学教職員(THE2008年3月27日号)
Staff give sector managers low marks
10種のセクターの2300人の労働者に対し、上司のリーダーシップに関してコウベントリー大学が2007年に実施した意識調査によれば、大学教職員が彼らの上司に対して抱いている印象は、他のセクターと比べて最悪であった。彼らは上司を「過剰反応的」「秘密主義」「一貫性が無い」「やり気を失くさせる」「管理的」「優柔不断」などと評価している。
また大学教職員の中では「上司や同僚からいじめを受けた経験がある」とする割合が高く、ストレスを抱えやすい傾向があることが同調査により分かった。これについては「マネジメントの貧弱さからストレスやいじめが横行している」というコメントも聞かれている。
大学連盟側は、いじめは職場の危険要因としてリスク評価の対象とされるべきと言っている。一方、大学経営者組合は、大学はストレス管理に力を入れているとしている。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
専攻間の壁を打ち破り、新たなコースを(THE 2008年3月20日号)
V-c keen for course design to break disciplinary divide
スコットランドのアバディーン大学が、「複数の考え方を持つ市民」を卒業生として送り出すことを狙いとしたカリキュラム改革を検討している。
メルボルン大学とハーバード大学に影響を受けているこの改革計画のひとつとして、総合的な学部コースを導入する考えがあり、いずれはそのコースが専攻科目と並んで必修となりうる。またこの計画によって、学部と大学院の授業の間に更なるコネクションができるとされている。
「もちろん今まで通りリサーチ能力を高めることにも力を注ぐ。しかしながら、公共政策における教養、論理的選択のために、テキストを通し学生にはさまざまな科目に関する基礎的な知識を持ってほしい。また、理系の学生には文系の、文系の学生には理系の何らかの授業をとってもらいたい」
と学長兼副学長のC・ダンカン・ライスは述べている。
(要訳:OFIASインターン 山下梨江)
海外情勢(THE2008年3月20日号)
Overseas briefing
カナダ:Facebookによる「盗用」
ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の一つであるFacebookに授業に関する意見交換の場を設置したことがカンニング行為であるとして、ライアーソン大学のコンピューター工学の学生が訴えられた。大学側は、「オンラインによるリスクを理解させ、違法行為を避けさせるための教育をおこなわなければならない」と述べ、それに対し同学生は、「もしもこれがいかさまなのであれば、大学が実施している指導教育プログラムもいかさまだ。」と主張している。
アイルランド:博士号取得者千人に達する
アイルランド共和国で博士号取得者が初めて千人に達する見込みである。アイルランドを知識経済、教育研究における「世界の中心」とすることを目指す政府政策に伴って、博士号取得者はここ10年で2倍にもなった。
米国:最高給はロースクール教授
米国における調査によると、ロースクールの教授が最高給を得ている。2007年-08年でロースクール教授は年収平均129,500ドル(約1288万円)、続いて工学部教授で107,100ドル(約1065万円)であった。平均765,00ドル(約756万円)と最も低い給与を得ているのは英文学、視覚・舞台芸術、フィットネス等の教授であった。
インド:偽装学位の発見
学位証明状が本物であるかの確認を在印の外国大使館がもとめたところ、インドのウッタル・プラデシュ州で10の大学が偽装学位を売っていたことがわかった。学位証明状は245ポンド(約5万円)で売られていた。
米国:寿命と学位
ハーバード大学医学部の研究によると、大卒者とそうでないものとの平均寿命の差がどんどん開いているそうだ。1980年代に対し2000年の25歳者の平均寿命は、高等教育を受けた人のグループにおいては1.4年伸び、そうでないものは0.5年であった。この寿命の差は、学位を取得するために十分な期間であると調査は伝えた。
オーストラリア:研究基金論争
オーストラリアの非研究集中型大学への連邦研究訓練制度(Research Training Scheme: RTS)における削減要求が却下された。「財源は主要な研究機関に配分されなおすべきであり、RTS方式は各機関が得る研究補助金を評価しなければならない。」とオーストラリア国立大学の副学長イアン・チャッブ氏は述べている。
(要訳:OIFASインターン 山下梨江)
「適格にターゲティングを行わなければ留学生は来なくなる」と産業界は主張(THE 2008年3月20日号)
Accurately target foreign students or lose, sector told
海外からやって来る「消費者」である留学生のニーズや行動を、大学は把握しきっていない、と「高等教育の再検討:国際化の実践」と題されロンドンで開かれた会議で議論が上がった。
発言者によれば、新世代の留学生達は「目が肥えて」おり、「大学は競争や顧客満足を理解していない」。「消費者」としての彼らは要求が多く、懐疑的で不平を述べ、経験豊富で情報へのアクセスをより多く持っており、更に忠誠心に欠け、訴訟好きかつ結果重視型で飽きやすいという。
また民族的なステレオタイプにあてはまらない留学生達を把握する必要から、国籍による分類に代わって、「サーファー(私生活優先)」「シーカー(保守的でよい就職先探しを優先)」「ゲッコー(個性には無頓着で経済力やステータスに興味)」「ボーノ(善行を行いそれが認められることを志向」「キッド(自分がなぜ大学にいるのか理解しておらず、わけの分からない熱狂ぶりや野心を見せる」の5つの新しいカテゴリー分類も提唱された。
同会議において、富と企業が繁栄する21世紀は「アジアが主役」と発言したディグビー・ジョーンズ貿易・投資相は、大学を、イギリス経済が直面するグローバルな課題を乗り越える戦略の中心に位置づけている。「成長した経済の通貨は知識」であり、「素質を巡る競争を勝ち抜くために大学は極めて重要」であると彼は述べている。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
休暇を減らして学生と大学との結びつきを強化(THE 2008年3月13日号)
Students get more time with tutors, but it’s no holiday
授業の質を向上させ、ドロップアウトする学生を減らすために、セントラルランカシャー大学ではクリスマス休暇とイースター休暇を減らすことになった。また、授業終了から試験までの間に長い休みを置くことで生じるギャップをなくすためにも、成績評価をクリスマス前に実施するようになる。
「学生が長期休暇によって大学から離れてしまうことは、記憶力の面からも、組織との繋がりの面からも良くない。お金を稼ぐことのできる休暇が短くなることは学生にとっては好ましいものではないかもしれないが、大学との結びつきが強いほど学生のためになるのだ」とリバプール・ホープ大学のベルナルド・ロングデン教授が述べている
(要約:OFIASインターン 山下梨江)
ラベル: セントラルランカシャー大学, リバプール・ホープ大学, 休暇, 成績評価
SATの価値に懐疑的な試験官(THE 2008年3月13日号)
Examiner doubts value of SATs
今月の教育研究雑誌Research Papers in Educationで、米国式大学進学適正検査(Scholastic Assessment Test、以下SAT)は入学者選抜に用いられるべきではない、という発言を英国の評価資格連盟の研究員が行った。
入学前の成績より将来の可能性を検査するSATは、不利な背景を抱える出願者にとってより平等な試験と言われている。しかし今回の反論を行ったネイル・ストリンガー氏によれば「現存する適性検査はやはり学生の社会的背景などに依存しており、そのような試験の結果を利用することには危機感を覚える」。代替案として英国全国中等統一試験であるGCSE(General Certificate of Secondary Education、以下GCSE)やGCE-Aレベル試験のスコアを学生の社会経済的な状況や学校での成績を考慮しながら利用することがあげられている。
また政府は4.5A相当を獲得した学生に対し、定員14-19名の学位課程を新たに設けることを発表した。国語と数学に重点を置き、より深い学習や自由研究を行うという。学生にとっての新しい「選択の資格」の提示として、学生の高等教育への誘致へ繋がることが期待されているが、一方で「混乱の道への別の一歩だ」という批判もある。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
米国との提携を得たサウジの大学(THE 2008年3月13日号)
Saudi university takes US partners
サウジアラビアで来年開校予定のキング・アブドゥッラー科学技術大学のカリキュラム作成や教員採用に関し米国の3大学が協力に同意したことに対し、米国側大学の教員が学問の自由の制限と「名声の切り売り」を懸念している。
協力に同意したスタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校、テキサス大学オースティン校のうち、数学とコンピューターのカリキュラム設立を支援するスタンフォードと教員雇用面・機械工学カリキュラム設立を支援するバークレーは5年間で約1000万ドル、更に共同研究に対し約1500万ドルの資金提供をサウジ側から受ける。テキサス大学は計算地球惑星学と工学のプログラム設立を支援し、5年間で約2700万ドルを受ける。
しかし米国大学側の研究者達の間では、サウジアラビアでは学問の自由の制限や女性・特定の宗教団体への差別があるのではないかと懸念する声や、サウジアラビアが米国大学の名声を「買っている」と指摘する声も上がっている。これを受け、協力大学やサウジアラビア側は「新しい大学に差別が存在することはない」とし、自由と機会の平等がこの大学から始まると主張している。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
海外情勢(THE 2008年3月13日号)
Overseas briefing
オーストラリア:実績の低い分野で研究修士や博士課程への入学不可
Group of Eight(Go8)と呼ばれる国内8つの研究大学と、その他38の大学が加盟しているUniversities Australiaは、政府に対し高等教育セクターへの資金配分で共通の姿勢を取ろうとしている。現在議論されているのは、実績の低い分野において研究修士課程や博士課程に学生を受け入れる資格を失い、一方で新機軸活動に使うのなら関連する連邦予算は続けて受け取れるというものだ。
米国:刑務所支出、高等教育費を上回る
米国のバーモント州、ミシガン州、オレゴン州、コネチカット州、デラウェア州では、刑務所の公共支出が高等教育支出を上回っていることが明らかになった。高等教育費が刑務所支出を上回っている州はアラバマ、ネバダ、バージニア州だけで、過去20年で高等教育費の増加が21%だったのに対し刑務所支出は127%も増加した。
欧州: 大学の質の評価基準統一
欧州の高等教育機関の質を評価する質保証機関をチェックするための新制度が開始された。「高等教育における欧州の質保証登録簿」(European Quality Assurance Register in Higher Education)は、信頼できる質保証機関について、明確かつ客観的な情報を提供し、欧州圏全体の高等教育の質を向上することを目的としている。4つの欧州高等教育関連機関によりブリュッセルに設置された。
ウガンダ:雇用保証、なくなる
ウガンダ政府は公立大学の全ての常勤の職を廃止することを明らかにした。同国教育省は、教員の仕事ぶりを向上させるため、徐々に常勤の教員を非常勤に切り替える政府案を起草し始めた。提案は大学視察委員会の勧告に基づくもので、無期限雇用は教員の「革新的で教育熱心な取組み」の喪失につながり、卒業生の質も低下するとの指摘による。
タイ: カンニングで腕時計禁止
タイの国立大学では入学試験中に受験生が携帯電話搭載の腕時計でメッセージを受信していたことを受け、試験中の腕時計着用を禁じた。タイでは入学試験の競争が激しいため、テクノロジーの発展でカンニングが巧妙化している。学生は教室の掛け時計だけを見るよう指示された。
(要訳:OFIASインターン 西村 李歩)
移民法は非現実的(THE 2008年3月6日号)
Immigration rules are 'unrealistic'
留学生が授業に出なかった場合大学に報告を義務付ける新移民法の施行が来年の初めに予定されており、これに大学が反発している。
新法の下では、EU外からの留学生が休業日を除き10日以上にわたり「妥当な許可」なく授業を休んだ場合やビザへの違反が疑われる場合、大学は国境移民管理局へ知らせなくてはならないという。また、大学が留学生の携帯番号やパスポートのコピーなどの情報を常に最新に保ち、当局と情報共有することも求めている。大学がこれらの義務を果たせなかった場合には、留学生受け入れ資格を取り消されるという。
この法律に対し、大学側側は「非現実的だ」と反発している。教員達に言わせれば、この法律に大雑把過ぎて、特に修士や博士レベルの学生の事情に合っておらず、多大なコストがかかり、情報提出期限の厳格さのためにかえって欠陥情報の蔓延につながることになるという。「大学の事情を考慮していない」この法律の影響で、英国首相が打ち出した2011年留学生7万人増加計画の達成は難しくなるだろうと彼らは予想している。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
ケンブリッジ大学でガバナンス改革に関し投票(THE 2008年3月6日号)
Cambridge faces vote on governance reforms
今週行われる投票で、大学カウンシルへの外部者2名の増員をケンブリッジ大学の教授らが支持するかどうかが注目されている。現在は委員定員22名中のうち教員が12人を選出しているが、新案が可決されれば全体数が24となり、教員は半数しか選出できないということになる。
オックスフォード大学とケンブリッジ大学のガバナンス改革は英国高等教育財政審議会(HEFCE)によって推し進められている。だがオックスフォード大学では昨年、よりラディカルな、大学カウンシルの過半数を外部者とする案は否決されている。
ケンブリッジ大学のカウンシルメンバーの一人、アンダーソン教授は、教授陣による伝統的な自治を撤廃することは、将来の大学カウンシルのあり方に大きく影響するだろうと懸念している。
(要訳:OFIASインターン 西村 李歩)
海外情勢(THE2008年3月6日号)
Overseas Briefing
インド:eラーニングの可能性広がる
インドでは、高等教育を受けられずにいる人々がeラーニングを歓迎している。「eラーニングへの期待は非常に大きく、地理的障壁が消え、より広範な教育への選択肢がひらかれている」マドラス大学副学長S・ラマチャンドランが、生涯学習に関するセミナーで述べた。
オーストラリア:大学の資金問題
財政状態の苦しい大学が、教育研究に当てられるべき資金のうち80%を、それ以外の目的に使っているとオーストラリアの新聞が伝えた。「大学にとっては、国家的優先課題が二の次となるのだ」とメルボルン大学のH・ルービンシュタイン教授が述べている。
米国:スタンフォード大学、中流家庭を応援
スタンフォード大学が中産階級の学生を対象とした奨学金プログラムを提案した。年収10万ドル(約1千万円)以下の家庭出身の学生は授業料を免除され、年収6万ドル(約600万円)以下であれば寮費も免除される。スタンフォード大学の来期の授業料は3万6千ドル(約360万円)で、寮費には約1万2千ドル(120万円)かかるとみられている。似たような動きはハーバード大学とイェール大学でもみられている。
カナダ:専門誌による政府批判
カナダの大学の科学者たちが危機に直面している。科学者たちは国内でなかなか評価されず、2006年にスティーブン・ハーパー率いる保守派が政権を握って以来それがさらに顕著となったとネイチャー紙が伝えた。同紙は、科学者は研究資金を求める動きを起こすべきだと主張し、また国立科学アドバイザーのオフィスの閉鎖を批判している。
香港:学生の将来を探る調査
学業成績が学生の将来の可能性にどのような影響を与えるのか、15歳から25歳まで8千人を対象に香港中文大学が調査を行う。「科学技術分野により就職機会があることから、金融関係にキャリアを合わせていると選択肢が限られてしまう」とプロジェクトリーダーは述べている。
米国:最高値入札者に履修のチャンス
米国の大学が定員オーバーの授業の履修者を選考するために、新たな方法を導入している。高等教育クロニクルによると、たとえばスタンフォード・語学センターでワイン試飲のクラスを持つパトリシア・デ・カストリーズは、登録のために彼女の研究室の外で眠るように生徒を奨励し、また、ペンシルバニア大学のウォートン・スクールでは、オークションを利用して履修者の選考を行う。
(要訳:OFIASインターン 山下 梨江)
専門的高等教育機関、政府助成金確保に苦心(THE 2008年2月28日号)
Specialist institutions may have to prove value to keep subsidy
英国に40ある専門的高等教育機関のうち、小規模のものは政府追加助成金の削減対象になるかもしれない。英国高等教育資金配分機構(Hefce)が最近発表した報告書によると、各機関が受け取る助成金は「公益に見合った額」に見直されるべきだとし、今後市場による大学の査定も検討されることになりそうだ。
音楽大学など小規模の専門大学は、ロンドンビジネススクールなど大規模の大学より多くの助成金を受け取っており、追加助成金が大学経営に不可欠となっている。報告書は、これらの大学の社会的価値と重要性を認識し、今後も十分な資金配分を受けられるよう配慮されるべきだとしている。
しかし、各専門大学がどの程度「公益と公的価値」を満たしているか定める基準が2010年までに設置され、それにより助成金配分が決定するため、外部による評価は厳しくなりそうだ。
(要訳:OFIASインターン 西村 李歩)
海外情勢(THE 2008年2月28日号)
Overseas Briefing
米国:一流大学がより多くの寄付金を
米国の大学やカレッジが、298億ドル(約3兆円)の寄付金を2007年に受け取ったことがわかった。その中でスタンフォード大学が8億3200万ドルと最上位である。この結果からもわかるように、裕福な大学が最も利益を得ており、全体の2%でしかないトップ20の機関が全ての民間基金のうち25.8%を集めている。
サウジアラビア:振る舞い方のコツ
何千人ものサウジアラビア人たちが、留学先での振る舞い方に関するオリエンテーションを受けている。そのオリエンテーションでは、宗教を重んじつつもその国の慣習にも敬意を払うことを強調される。また、イスラムで禁止されている異性との関係事項についても扱う。
米国:非常事態訓練の必要性
暴力事件が起こった際の学生の対応を訓練することで、米国のキャンパス内でのさらなる安全が確保できる。最近のキャンパス内発砲事件からも分かるように、学生が事件を防ぐうえで大切な役割を果たすであろうと米国の高等教育ジャーナル『高等教育クロニクル』が伝えた。37の発砲事件のケースをみると、犯人は事件を起こす前に、その計画に関して少なくとも同級生1人には話している。しかしながら誰も報告をしなかったのである。
インド:財政支援、質の向上を求める
インド政府は高等教育改革を早めるためにもっと資金をあてるべきであると国家知識委員会(the National Knowledge Commission)が述べた。改革のひとつとして、全ての大学や研究室、図書館、病院、農林系機関を高帯地幅ネットワークでつなぎ、データを共有できるようにするといった提案があり、そのためには更なる財政支援が必要となるだろう。
オーストラリア:アボリジニの参加率未だ低く
1996年から2006年の間で、オーストラリア高等教育における先住民の参加人数は1860人増えただけであった。2005-06年の増加数8854人に対して、アボリジニ以外のオーストラリア学生の人数と合わせることを考えると、控えめにみても2倍の18000人まで増えるべきであるとウェスタンシドニー大学が述べた。
(要約:OFIASインターン 山下梨江)
ロンドン大学の学部合理化に教員は懐疑的(THE 2008年2月28日号)
Staff sceptical over streamlining of UCL faculty
経営を合理化し研究者が研究に充てる時間を確保することを目的として、ロンドン大学のユニヴァーシティカレッジが決定した教育と研究の分離が議論の的となっている。中でも生命科学部は2ヶ月前に組織の再編成が行われ、1月より新組織体系で運営されている。移行に伴い8つの学科が廃止され、研究に関しては研究部が担っているが、これにより各研究部の長たちは研究に関連した仕事に専念することができるという。
しかし研究者から上がる懐疑的な声は止まない。旧薬理学部の「死亡告知記事日誌」をウェブ上で公開しているデヴィット・コルクホン教授によれば、新しい学科は「大きすぎて」「首尾一貫した理論の無い」ものであり、研究者から経営者にコースの設置や備品までに関わる力が譲渡されているという。再編成に賛成する研究者も、研究者側から運営側に意見を言えるシステムも重要であると言う。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
ラベル: ユニヴァーシティカレッジ, ロンドン大学, 経営合理化
ビジネスと教育(THE 2008年2月21日号)
Business divisions
高等教育機関全般において、大学経営の専門職化により多くの大学に構造的、文化的な変化が起きている。高等教育とは無関係の分野からの大学経営者、事務職員の採用が増えているだけでなく、高等教育全般にビジネス化の傾向が見られる。大学経営者のマーケティング能力や人材管理能力などが重視され、報酬にも影響するようになった。優先事項をめぐって研究者と経営者で意見の対立も生じている。
平均的な米国の大学は年間予算の約10%、アイビーリーグでは20%をマーケティングにあてており、英国も同じような方針をとることになるという指摘もある。バーミンガム大学のビービー教授は、「以前は質の高い研究を行う手段として外部資金を調達していたが、今では資金調達が大学の目的そのものになっている」とし、学術理念が運営方針の後回しにされていると懸念している。
オックスフォード大学のルドル氏は、教育と経営の対立はあるものの、優秀な大学は変化に柔軟に対応し、両者をうまく利用することができると言う。大学という複雑かつ多様性のある教育機関では、教員と専門職員が協力して運営することが望ましいと指摘する。
ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジのハラス氏は、大学運営の「職業化」は、学校管理を専門職として認識することで、具体的な資格が求められ、大学側は人材育成のための訓練も援助すべきだとする。
民間部門などから採用された大学経営者は、ビジネス感覚を生かした新しい視野を取り込むという面で有益だが、意志決定においてコンセンサスを重視する教育機関になかなか適応できないこともある。大学では、人材斡旋業者に高額を払い優秀な副学長や経営陣を採用しようというところでてきている。経営者採用でのミスは将来のビジネス戦略に打撃を与えることになるため、多くの大学は競ってトップ経営陣を確保しようとする。
教職員組合(UCU)など、人材会社を介した採用に懐疑的なところもある。サリー・ハント氏は、「そのようなサービスを考慮する前に、まず内部を見て、なぜ優秀な人材が応募してこないのか、報酬、労働条件、昇進の機会など職員に対する大学の対応はどうかを見直す必要がある」と述べている。
(要訳:OFIASインターン 西村 李歩)
「就職のために勉強する」ことで消える学問への愛(THE2008年2月21日号)
Love of learning lost in ‘studying for jobs’
教育を、就職のための単なる道具としてみるように人々をけしかけているとして、政府政策に強い批判が起こっている。
大学生が、その科目が好きだから勉強するのではなく、学位を労働市場へのパスポートとしてとらえるようになっている。「経済と教育の間につながりがないと思うほど『愚か』なものはおらず、実際にそのつながりが弱すぎる時代も過去にはあった。しかし今は振り子が道具主義としての教育へ傾きすぎている。学位が本来の意味をなくすのと同様に、仕事への興味なしに単なる金稼ぎの手段として就職するために、仕事のスキルが落ちているのではないか」とアングリア・ラスキン大学のマイク・ソーン副学長は嘆く。
これに対して「授業料収入を、図書館・授業のサポートスタッフの向上などに使ってほしいという学生からの要望や、教官との関係に望んでいることからもわかるように、学生たちが就職のためだけに勉強しているのではないことは明らかだ」というあまり悲観的でない意見も出ている。
(要訳:OFIASインターン 山下 梨江)
海外情勢(THE 2008年2月21日号)
Overseas briefing
オーストラリア:高給料職により大学生数が減少
国内の資源市場好況のために、大学出願者数が減少している。鉱物資源開発の拡大が労働市場の加熱へと繋がった結果、18歳の若者が重機の運転で年収13万オーストラリアドル(約1290万円)を稼ぎ出している現状は「大学の需要を損なっている」と現地の新聞は報じている。
ジンバブエ:崩壊する教育システム
ジンバブエの教育システムが、2000年からの国家財政破綻により倒壊しつつある。学生連盟の元連盟長によればジンバブエは「高等教育に関する公的支出の急激な減額、教育状況の悪化、教育設備・インフラの倒壊、学生の不安、大学自治の侵食、良質の教員の不足、学問の不自由、大学卒業生の失業」に直面しており、学生からの献血の95%がHIV陽性であるという情報も上がっている。
米国:商才への架け橋
米国を拠点とする経営教育評価機関AACSBが、経営大学院の教員数を増強するブリッジプログラムを促進することが報じられた。このプログラムは、企業の経営幹部が大学教員となるにあたって、彼らに教育・コース開発スキルをつけさせることを目的としている。
バーレーン:新しく課された基準
バーレーンの私立高等教育機関は6月までに財務や学問分野において新しい基準を満たすことが求められている。教育相によれば、私立高等教育機関は「専門的な法律に即して扱われ、財務や学問の要件や基準に加えて3年間で施設・教育設備の要件も満たす」ことになる。
米国:海外留学のための学費に関する訴訟
海外留学中の学生が米国での所属大学に納める学費が再び議論に上がっている。最近、留学先での費用よりはるかに高額な授業料・寮費を徴収するのは不当として学生の父親が大学を訴え、海外で取得した単位のために所属大学へ学費を納入することの是非が問われている。
オーストラリア:搾取される留学生
最近の調査によれば、オーストラリアにいる留学生の多くは最低賃金より低い賃金で働き、最も搾取されている層に属している。これはオーストラリアのサービス産業輸出としての観光業の一部を教育が担っている結果である。教育サービス輸出は2007年に前年より21%増加、留学生数は前年値から18%増加している。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
本質を求めて(THE 2008年2月14日号)
Soul searching
「人文科学が危機に瀕している。ただつまらないと、同僚からも一般の知識人からも軽くみられるようになった」とスタンフォード大学で英文学・比較文学を教えていたマージョリ・パーロフ名誉教授は述べた。伝統的に正統派科目であった人文科学だが、現代においては求められているものとのバランスがとれず、時代遅れの価値がないものだと、外部の人間だけでなく、人文科学研究者自身も思い始めている。
問題は、「読む価値のあるもの」が決められており、そしてこれらの勉強こそが価値あるものなのだとするエリート主義と文化帝国主義が存在することである。不公平に認められない作品に対する学生のアクセスに制限をかけてしまうなど、少数派を除外することによりヒエラルキーを守り続けようとしているのだ。
しかしながら一方で、人文科学に対し肯定的な意見も聞かれる。たとえば今日の諸問題は歴史に関する無知ゆえに起こっているとして憤りを感じている市民たちが、政治的運動を起こしていることも事実である。このことに関し「本当に無意味なものなどないのだ」と歴史学者たちは満足している。また自分たちは、学生がより思慮深く批判的な、ある意味でのよい市民となるサポートをしていると信じている研究者も多くいる。
「人文科学における学びは、静的で受け身なものではない。私たちが読み、考え、書くことで変化が生まれるのである」とサセックス大学のアンバー・ジェイコブス氏は言う。
人文科学を学びたい学生の数は減らない。本当の「危機」は、人文科学、その科目自体の重要さと、学生の人生に与える良い影響、それら双方の価値を学者たちが説得力のある主張で伝えることができるかどうかである。
(要訳:OFIASインターン 山下 梨江)
ラベル: 人文科学
海外情勢(THE 2008年2月14日号)
Overseas briefing
中国:広がる通信教育
中国では過去10年間で通信教育を通し学位を取得した学生が600万人を超え、現在でも同制度で4,000万人が教育を受けていることが明らかになった。中国では1978年以来、国内44の省立大学がテレビやラジオ、インターネットを使った通信教育を実施しており、地方に暮らし大学に通うことができない学生の教育を支援している。また、土壌学や水の保全など農業に関する専門技術は農村地域に生かされている。
ドイツと英国:研究資金調達の一元化
英国の芸術・人文科研究会議(AHRC)とドイツ研究協会は、研究面での資金協力を発表した。共同プロジェクトに携わる両国の研究者らは今後一つの企画書で共同資金を調達できるようになり、これまでの二重申請を回避できるようになった。
米国:私立大学の価値
マサチューセッツ工が公益をより効果的に示さなければ、米国議会の金融政策に干渉されてしまう」と指摘した。ホックフィールド氏は、大学の金融政策を決めるのは連邦政府ではなく個々の大学だとし、政府は大学の経営に干渉しないよう訴えた。
インド:試験結果発表早める
大学入学金助成委員会は、大学院進学希望の卒業生のために学位の結果発表日を、7月か8月に前倒しするよう国内全ての大学に申し入れた。しかし現在インドでは、大学が決まった時期に試験を実施しなければならないとう規定はない。
アフリカ:学者のネットアクセス
アフリカの研究教育にテクノロジーを利用した革新的な試みが始まった。アフリカと欧州34カ国3,000万の研究・教育機関を網羅する高速インターネットアクセス、ウブントゥ・ネット・アライアンスは、アフリカの9カ国と国際社会をつなぐネットワークで、学者間の情報共有や研究能力向上を目指す。
(要訳:OFIASインターン 西村 李歩)
雇用現場のニーズを満たせない中東の大学(THE 2008年2月14日号)
Middle East universities fail to meet region's jobs needs
世界銀行がモロッコからイラク、パレスチナ自治区も含めた中東・北アフリカ地域において実施した教育全段階に関する調査によれば、この地域の教育と労働市場の間には食い違いがあるという。「教育と経済成長の関係が弱く、教育を受けることが経済力獲得に結びついておらず、教育の質が期待外れのままである」と報告書は警告する。
高等教育機関の卒業生が就職できない。公的セクターが民間より大きく給料も高いのだが、大学が、学生がそこでの仕事のために身につけるべきスキルとして何をカリキュラムを組むべきかわからないのでいるからである。
現状は国によって差があるが、中等・高等教育年齢人口の多さと、その高い人口増加率がシステム全体に負担となっているところは共通している。大学は公的資金だけでなく民間資金からの拠出を探るべきであると報告者は言う。高等教育が公的利益だけでなく民間への利益にも貢献し得るからである。
この報告書は、中東・北アフリカの全教育課程の問題の鍵となるのは、インセンティブの改善と公的説明責任であろうと結論付けている。
参考(報告書pdf):
The Road Not Traveled : Education Reform in the Middle East and North Africa
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
ブラッドフォード大学、言語学部閉鎖へ(THE 2008年2月7日号)
Bradford to silence its languages department
ブラッドフォード大学が現代言語学部の通訳・翻訳の修士コースを閉鎖する予定である。それに反対するインターネット署名運動には約1400人が参加し、フランス語大学教員協会(the Association of University Professors and Heads of French: AUPHF)もブラッドフォード大学に対し遺憾の念を表している。
大学は入学希望者が減り続けているため2003年に4年間の補助金を学科に与えたが、更なる入学希望者減少を受け、2006年に学部生募集を、昨年2007年には修士コース生募集を停止した。「しかし現代言語を学ぶことは学生にとって大変重要であり、どうやって学生に言語教育を提供するか方策を検討している。」と前副学長のレイヤー教授は言う。大学組合側は修士のプログラムを閉鎖したということは学部の閉鎖、教員削減は時間の問題だろうと言っている。
英国にとり翻訳サービスは重要であり、高等教育における現代言語教育は政府の補助金とともに継続されるべきであるとAUPHFは主張し、学生たちによる署名グループが、首相にまで訴えを起こしている。
(要訳:OFIASインターン山下 梨江)
ラベル: ブラッドフォード大学, 英国, 言語教育
海外情勢(THE 2008年2月7日号)
Overseas briefing
米国:上院、大学の資金用途の詳細要求
最も資金力のある国内136の大学は、寄付金の使用用途、学資援助制度、そして過去10年間の授業料の増加について情報を提供することになる。大学への寄付金は授業料、学長の年収とともに年々増加しており、これらの資金がどのように教育の向上と学生支援につながっているのか調査する必要があるとしている。
ヨーロッパ:博士課程教育の連携高まる
欧州で800の大学が加盟している欧州大学協会(European University Association)は、博士課程教育研究推進評議会を発足した。博士課程教育の国際的重要性を高め、欧州外の傾向を調査し、各機関の戦略を支援することを目的としている。
カナダ:国立科学アドバイザー職務終える
カナダ政府は昨年4月に科学・テクノロジー・イノベーション委員会が設立されたことを受け、国立科学アドバイザー研究室を廃止することになった。発足して4年もたっていなかった。
中国:カンニング防止に政府動く
学生が試験中のカンニング術に腕をあげているため、中国教育部は試験実施手順の向上とより厳しい罰則を法に盛り込むことにした。学生の間では組織化されたカンニングや送受信機能付きラジオを使うなどの手口が横行しており、調査では学生900人のうち83%がカンニングしたと答えた。
米国:アフリカ旅行返金に終わる
ワシントン大学では17名の学生が「持続可能な発展とエンパワーメント」を学ぶためガーナの村落に5週間の旅行を企画していた。しかし12人が病気になり、うち8人が首都アクラの病院に転送されたうえ、シアトルの病院に追加治療のため運ばれた。旅行は中止され大学は17人全員に2500ドル(約26万5,800円)払い戻した。
インド:英語力支援計画
デリ大学は、学生のニーズに沿った英語習得コースで、学術論文やレポート執筆に役立つようなプログラムを提供する計画を打ち立てた。学生の多くは語学力が不十分なために論文やレポートで苦しんでおり、授業でも消極的になっている。大学は学生の英語力向上に意気込んでいる。
(要訳:OFIASインターン 西村 李歩)
指導教員:「留学生の必要英語力の最低基準が低すぎる」(THE 2008年2月7日号)
Minimum English standard is set too low, tutors say
留学生に対しては入学許可申請の際にIELTS(International English Language Testing System) 試験で最低6.5~7のスコアが義務付けられているが、それでも授業コースに充分対応出来ていないという。
中国人留学生の英語力について調査したリーディング大学の言語・リテラシー・センター長ヴィヴ・エドワード博士の発表によれば、留学生たちが英国に順応しようとがんばっていることを認めつつも、学生の水準を維持が憂慮されている。例えば外部評価は大きな懸念事項であり、留学生のプロジェクトの内容が優れていても文法的間違いを修正させるケースが多い。留学生のライティング・スキル不足も問題であり、彼らの指導教員はどの程度手を入れるべきか頭を抱えることもあるという。
エドワード博士はライティングをサポートする経験豊かな指導教員を大勢確保しておくことを提案し、「英語が外国語である学生向けの補助教材を作るため指導教員と各コース担当教員の連携が必要」と述べている。英国人学生も、留学生の語学力に対して期待の修正が必要なようだ。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
「安全な英国」、留学生の人気高く(THE 2008年1月31日号)
UK begins to rival US in popularity stakes
英国は治安の良さと教育水準の高さで留学生にもっとも人気のある国となっている。143カ国からの11,000人以上の留学生を対象に実施した調査では、回答者の95%が英国を「魅力的」または「非常に魅力的」な留学先としており、米国の93%を上回った。
英国の政府関係者は、留学生がもたらす恩恵は大きく、大学の国際化や世界レベルの研究基盤の維持を助けているだけでなく、大学運営の貴重な収入源であり、英国経済全体にとっても有益だと話している。
もっとも評価が高かったのは英国の治安の良さで、96%の留学生が「個人の安全」のカテゴリーで「よい」または「非常に良い」と回答し、2位の米国、86%を上回った。「取得資格の信頼性」では米国の99%がトップだったが、英国は2位で97%を得た。
報告書によると、米国は英国にとって留学生市場で最強のライバルだが、留学生がまず注目するのは国ではなく大学だと指摘する。質の高さを維持するために米国のような留学生の大量誘致は避けるべきだとしている。
(要訳:OFIASインターン 西村 李歩)
海外情勢(THE 2008年1月31日号)
Overseas briefing
中国:大学院入学者の減少
国立大学院入試受験者数がここ10年で初めて減少に転じた。報道によれば、これは学歴より実力が重視されるようになり、修士・博士号取得者の雇用機会が減少していることに起因するという。同時に修学のため国外へ出る学生の数は20万人に達することが予測されている。
インド:新しい教育の考え方を要求する報告書
国立知識協会のサム・ピトロダ会長はインド首相宛「国への報告書」を提出するにあたり、「インドの教育に関する新しい考えへの『抵抗』が存在する」と発言した。発言の中で会長は、硬直した組織体系や縦割り的な思考を持つ政府内に様々なレベルでの抵抗が存在しており、教育セクターにおける協調的アプローチが必要としている。
米国:留学業者が調査対象に
海外大学への留学プログラムに関し、大学職員の誰が留学契約を承認するのか、プログラムはどう選択されるのか、送り出し大学側は留学業者から何らかの報酬を受け取るのか、の調査の対象大学が広まっている。これは昨年の業者から大学へのリベート提供などから起こった懸念である。これまでのところ留学業者に関する規制は無い。
オーストラリア:フリンダーズ大副学長、高い学費を非難
フリンダーズ大学の新副学長マイケル・バーバー博士によれば、オーストラリアの大学生はカリフォルニア州の大学生よりも教育の経済的障壁に直面しているという。「大学の資金ニーズの重要性を認識しない限り政府の新しい教育改革は上手く行かないだろう」と博士はコメントしている。
カナダ:議論にさらされる私立医学大学院
カナダの医者不足問題を解決するのは私学セクターによる医学教育である、とカナダ医学協会のブライアン・デイ会長が発言した。医者不足によって起こっている経済的損失を補うには、納税者に頼ることなく学生自身の払う学費でまかなうことが出来る私学、特に米国の大学のカナダ分校であるという。一方で「私立は多額の学費を必要とするので、学生が借金に追い込まれ、中・低所得者層の学生はアクセス出来ない」という批判も起こっている。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
偏った留学生誘致に警告(THE 2008年1月24日号)
Coventry official warns of “risky” foreign recruiting
コヴェントリー大学のジリンガム教授は、大学は一国から多数の留学生を受け入れるのでなく、留学生出身国に関し多様性を保つことが望ましいと指摘する。
英国へは中国からの留学生が最も多く、中国人学生が1,000人近く在籍する大学もあるが、病気、政府政策の変更などほんの少しの出来事で留学生が来なくなる可能性がある。英国では、1990年後半に起きたアジア経済危機で、東南アジアからの留学生が一夜にして激減し、同地域からの学生が多かった大学は打撃を受けた。その教訓から学んでいない大学も多い。コヴェントリー大学では一国からの留学生が15%を超えないよう規制を設け、広く留学生市場に目を向けている。
(要訳:OFIASインターン 西村 李歩)
非研究者が学部運営で支配的になるとの予測(THE2008年1月24日号)
Non-academics predicted to take over the running of departments
エグゼター大学のジョナサン・ゴスリング氏が、いずれ大学の学部は研究者ではない人材によって管理運営されることになるだろうと指摘している。大学経営スタッフを採用するにあたりもはや研究業績は重要な要素ではなくなっており、研究者と経営職員によって運営されている比較的大きな教育機関では、徐々に経営職員の方へバランスが傾いているという。
研究業績のない人材によって統率されている大学もいくつか出てきている。シティ大学のエイドリアン・モンク氏は、学部長就任時は研究業績を有していなかった。シティ大学の学長も、学術的背景を持っていない。
(要訳:OFIASインターン藁科 智恵)
政策ウォッチ(THE2008年1月24日号)
Policy Watch
生涯学習:デナム氏がインフォーマルな勉強を賞賛
公式な資格をとるためのものではない成人の「非公式な」学習についての協議会が設置された。ジョン・デナム・イノベーション・大学・職業技能大臣は「公式な」学習に政府が優先順位をおくことはもっともだが、「非公式」な学習も国の形成に重要な役割を果たすとし、また、「生涯学習はテレビや地元の博物館、インターネット検索などで簡単にでき、また志を同じくする学習者のグループへとつながる。それらを通じて、学習者自らが21世紀の新制度を作り上げているのだ。」と述べた。
環境問題:英国大学協会とグリーン・アジェンダ
気候変動に対する大学の取り組みが、今週英国大学協会が発行した「Greening Spires-大学とグリーンアジェンダ」の中で賞賛されている。大学による気候変動のモニター、対応策の研究、環境に与える取り組みの影響、他組織との協力などが強調されている。産学連携や国際的連携など、環境問題における大学のリーダー的な役割への期待は高い。
英国イノベーション・大学・技能省(DIUS)の科学開発戦略:センズベリー計画開始
DIUSが、新しい科学開発戦略への寄付・アイディア募集している。春に公表予定の戦略は「科学開発政策に明確なビジョンと方向性」を与えるものとされている。
胎生学研究:ヒトと動物のハイブリッド胚に許可
英国政府ヒト遺伝学委員会が、キングズ・カレッジとニューキャッスル大学に対し、ヒトと動物のハイブリッド胚の製作を1年間の期限付きで許可した。
(要訳:OFIASインターン 山下 梨江)
海外情勢(THE 2008年1月24日号)
Overseas briefing
米国:ペースの追いつかない研究投資
政府の科学分野研究への投資の増加率が物価上昇率よりも低いことが報じられ、同分野におけるアメリカの優位性が失われることが危惧されている。一方で博士号取得者への連邦投資は1980年から2006年まで変わらず安定しているとする調査結果も報告されている。
カナダ:学士が雇用増加を促進
学位段階まで高等教育を受けた人々がカナダ・アメリカ労働市場回復のカギである、とする研究報告が出された。1980年と2000年の調査によれば、科学技術セクターでの学士採用は、関連した分野の学位でなくとも都市部で高まっているが、一方で学士の数が少ない都市では労働市場の成長が低いとする報告も出されている。
オーストラリア:研究者の自由な発言を認める憲章
研究機関がメディアにコメントを公表する前に政府の許可を必要としていたことを受け、研究者が研究分野に関連した論争に参加する権利を与える憲章の作成が決定された。キム・カール産業科学研究相は、この憲章が議論に参加する権利と義務を研究者に与える効果を認めつつも、政策の「明確化、策定、推進」に政府は責任があるのだということを各機関は理解すべきだとしている。
米国:エール大学、生徒への援助拡大
エール大学は、今秋から経済支援対象を拡大し、年収が20万ドル以下の家庭出身の学生にも援助を行うことを決定した。この方針により、援助を受ける学生たちが払う授業料の平均は通常の50%となるという。ハーバード大学もまた、年収12~18万ドルの家庭出身の学生に対し各年収の10%程度となるよう学費を免除する方針を昨年打ち出している。
ベトナム:教育路線への投資増強
ベトナム政府が、高等教育増進に2010年までに13億ドルを投資する新しい教育プログラムを発表した。高等教育を受ける学生の数を現在の一万人中181人から、2010年までに200人、2015年までに300人、2020年までに450人まで増やすことを目標としている。
中国:研究者のための特許
公的支援を受けた研究から中国の科学者、研究所および大学が自分名義の特許を所持することが可能になった。これは改革促進を目指す運動の一環であり、研究者や大学に対してインセンティブを提示することを狙いにしていると考えられる。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
政策ウォッチ (THE2008年1月17日号)
Policy Watch
英国高等教育資金配分機構協議:説明責任にフォーカス
英国高等教育資金配分機構(Hefce)から高等教育諸機関への資金配分方法の変更に関する協議が始まった。Hefceの資金配分を規定する財政規約、及び説明責任・監査実施規則が焦点となる予定である。
英国研究審議会:ダイアモンド議長続投
経済社会研究委員会の最高責任者イアン・ダイアモンドが、英国研究審議会の議長を続けることが決定した。
高等教育質保証機構(QAA):健康管理基準の改訂
質保証期間(QAA)はスコットランドの看護、助産、公衆衛生学のための「分野別達成水準書」の見直しを行う。水準書の改訂は、各該当分野の政策変更や新規政策設定によるサービス供給状況の変化を職業人養成計画に反映させるためのものである。
海洋科学研究:政府が担当機関提案の計画を拒否
大学やエンドユーザーと協力して海洋研究を行うための新しい海洋機関の設立を前科学技術審査委員会が提案していたが、厳しい財政状況の中適切ではないとして政府に拒否された。
短期教員養成研修:キングストン大学主導
地元学校の教員のための特別速習で成功しているコンソーシアムが再編成され、キングストン大学が、ローハンプトン大学とセント・メリーズ大学を結ぶ西側地区ロンドン組合のリードパートナーとなり、400人の教員養成を目指す。研修期間は3ヶ月と短く、学生のスキルと経験に合わせて指導が行われる。
(要訳:OFIASインターン 山下 梨江)
研究者のウェブ利用によって図書館が不要に(THE2008年1月17日号)
Researchers’ web use could make libraries redundant
図書館が研究者や学生の需要に応えることができなければ図書館自体が姿を消すことになるだろうと、英国図書館共同情報システム委員会に委任されユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(以下UCL)が行った研究が警告している。
この研究は、いわゆるグーグル世代(1993年以降生まれの、インターネットがないという記憶のない人々)を分析し、5~10年後に研究者がどのような方法で文献にアクセスするかを調査したものである。
ログインや料金、プリントアウト等々はどれも消費者にとっては情報のアクセスに対する壁であり、それらを介する情報は無視されることになるだろうとしている。また、図書館は数多くの文献を提供しているが、検索システムがユビキタス検索エンジンに比べ分かりづらいという点も指摘している。そして、物理的な図書館からバーチャルな図書館へのシフトは急速に進むだろうとし、グーグル・スカラー(グーグルによる学術論文検索システム)などは図書館にとって組織存続の脅威となるだろうとしている。
一方、UCLのイアン・ローランド講師は、非常に複雑な情報環境の中に置かれてはいるが図書館は大量の印刷文化の遺産の上に成り立っており、消え去ることはないとしている。
(要約者:OFIASインターン藁科智恵)
海外情勢(THE 2008年1月17日号)
Overseas briefing
インド:通信教育を強化
2015年までに大学進学率15%増を目指すインドは、通信教育の大幅な拡大と同時に、現在ある通信教育の質を向上させる必要がある。同国の知識委員会は、公式文書で政府に改善策の導入を促した。
ニュージーランド:博士課程の研究重視
オークランド大学を含む少なくとも国内3つの大学は、学部コースを縮小し、博士課程の研究充実に力を入れる方向だ。ニュージーランドの高等教育における財政政策の変化で、大学での研究の質がより重視されることになる。
オーストラリア:科学は母親の心をつかむべし
「母親が科学やテクノロジーに興味があれば子供も関心を持ちやすい」と指摘するのはオックスフォード大学元教授マーティン・ウェストウェル氏。21世紀の科学教育は、いかに母親に興味を持たせるかが課題となりそうだ。
米国:中国人留学生急増
今年度ハーバード大学に在学している中国人学生は総留学生の10%にあたる400人で、もっとも多いカナダ人学生に続き2番目に大きなグループとなった。2007年は米国の大学への中国人留学生が過去最多を記録し、中国に対し51,500の学生ビザと交流訪問者ビザが発行されている。
米国:大学への寄付金増
国内31大学が、1大学あたり10億ドル(1,060億円)を募る募金運動を行っていたが、2007年12月には6億3,700万ドル(約670億円)の寄付を得た。もっとも多かったのはペンシルベニア大学で、同月6,000万ドル(約64億円)の資金を集めた。
米国:教育支援に州苦難
2007年度、州税による高等教育予算額は7.5%増の775億ドル(約8兆2,630億円)で、1985年以来もっとも大きな増加となった。過去4年間増加が続いたが、住宅市場の下落の影響もあり、多くの州が赤字に備えると思われる2008年度の予算額は減少する見込みだ。
(要訳:OFIASインターン 西村 李歩)
学生の感性に訴えるよう助言を受ける教授陣(THE 2008年1月17日号)
Lecturers advised to play to students' emotions
レイチェスター大学では「パワーポイントやフリップチャート、OHPを脇に置いて」、生徒と人間的にかかわることが教授陣に奨励されている。感情的知性をテーマに最近開かれた「教室において気持ちを理解することの重要性を理解する」方法を学ぶワークショップは、同大学の教員研修プログラムの一環である。
先週のセッションは、自分は信頼されている、力を試されていると学生たちに感じさせる環境を、いかに抑圧的にならずにつくりだすかを教員に考えさせるものであった。
参加者の一人であるマーク・アリンソン教授は「シニカルな目で見る人々も、一方我々が感覚的にべったりした社会に生きていることを表していると思う人々もいるとは思うが、有意義なワークショップだった」「感情は学習の中で重要な役割を担っている」と言う。
同じく参加した臨床微生物学を教えるプリムローズ・フリーストーン講師は、「より消費者的になってきている学生たちは、支払う金額に見合った価値を期待しているのだと我々は認識し、彼らを支える環境を整えるべきなのだ」とコメントした。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
政策ウォッチ(THE2008年1月10日号)
Policy Watch
学位の基準:より良い水準が期待
学位判定のシステムが、出版物によるプレッシャーによって影響を受けていることがわかった。バージェスグループ(The Burgess Group)は、評価システムがその目的にあっていないのだと結論づけた。
知的財産:著作権法の広がり
イノベーション・大学・職業技能省による英国の著作権法協議のもとで、既存の法では矛盾してしまう音楽や映画含め、全ての項目に適用されるようになるかもしれない。
英語教育対策:デナム氏、基金提供対象を変える。
ESOL(多言語話者のための英語教育)公的基金は、英国に長期で暮らすつもりでいる人たちにターゲットを変えるべきだとイノベーション・大学・職業技能相が述べた。
質保証機関(QAA:Quality Assurance Agency):ウェールズの苦情処理ウェールズの高等教育機関で「懸念」が生じたときとられる処置に関する協議がQAAによって行われる。「懸念」を示す主体は専門的なものに限られ、QAAは非公式で質問すること、そして必要の際には公式な調査を導入するべきだとしている。
医療審議会:補助金見張る戦略委員会
医療審議会は学際的な研究を助長し、実用的な研究を促進するよう組織構成を変えると公表した。人間科学、国際保健、国際的な研究や訓練、そして職業といった4つの「テーマ別概観グループ」が新たに設置される予定である。
第三セクター研究:チャリティー部門に焦点を1千25万ポンド(約20億5千万円)の予算をもつ学際研究センターが、第三セクターやチャリティー部門に目をむけており、5年間にわたる基金は3つの研究者「能力構築」グループも支援する。このプロジェクトは経済社会研究委員会の主導により実行される。
(要訳:OFIASインターン 山下 梨江)
ラベル: 政策
高等教育審査機関が審査に学生の助けを求める(THE 2008年1月10日号)
QAA to enlist students to audit quality
調査チームに学部学生を入れるとの高等教育審査機関(以下QAA)の計画が議論を呼んでいる。
チームの規模は監査する機関の大きさにより異なるが、3人の監査員と1人の補佐からなる場合、そこに更に学生が追加されることになる。
QAAの学生参加担当者のダグラス・ブラックストック氏は、QAA側は、学生を有益なパートナーとして見ており、学生を機関審査に取り入れることは、現在ヨーロッパにおいて一つの目標となっているとした。
しかし、これに対する反対意見もあり、リバプール・ホープ大学のロジャー・ブラウン氏は、監査員は研究者もしくは職員であるべきで、いくら訓練を受けていても学生が対等に参加し貢献できるかどうかに疑念を呈している。
今年の春から学生は、監査のオブザーバーとして参加しており、訓練の必要性、また学生が監査にどのように貢献できるかということに関する報告を行っている
(要訳:OFIASインターン 藁科 智恵)
ラベル: QAA(高等教育審査機関), 学生参加
海外情勢(THE 2008年1月10日号)
Overseas briefing
ケニア:選挙後の暴動で大学休校
先月ケニアで行われた大統領選挙で、敗れた野党が選挙の不正を訴えたことにより各地で暴動が発生。同国の大学は新学期の開始日を延期。開始の見通しは立っていない。
アイルランド:留学生が急増
アイルランドの大学に在学する留学生の数は2007年度に12,000人近くに達した。過去10年で170%の増。昨年度は約114カ国からの留学生がおり、うち20%以上が米国、9.5%がマレーシア、9.4%が英国だった。
米国:ハーバード、中流家庭の学生に援助拡大
ハーバード大学は中流階級の家庭の学生に資金援助を広げる見込み。年間所得18万ドル(約1900万円)までの家庭が対象となるが、対象家庭の拡大により、各家庭が得る援助額は所得の10%以下になる。
オーストラリア:労働党、授業料全額支払い規制の上限をなくす
オーストラリアの公立大学は、一定の学部定員枠を授業料を全額支払う現地の学生と留学生に与えているが、与党労働党は全額払い規制の上限をなくすことを決定。2006年度、全額を払った学生は全ての公立大学の約8%だった。
インド:国内初の共同大学
インド全国共同組合連合(NCUI)は、同国初の共同大学を設立する。Jawahar Lal 国際共同大学は、法律、マネージメント、コーポレーション、国際貿易、そして情報技術についてのコースを提供する予定。また、20の関連機関では、職業教育や専門技術を学ぶことができる。
マレーシア:「卓越性の結集」計画
マレーシア政府は、2010年までに10万人の留学生を誘致する計画を打ち出した。優れた人材が集まるハブ地域としての存在をアピールする狙いがある。現在マレーシアの留学生は約52,000人。
(要訳:OFIASインターン 西村 李歩)
セキュリティ配慮が指導教官へのアクセスを制限(THE 2008年1月4日号)
Security limits tutor access
読み取り式カードの導入で講義棟へのアクセスが制限され教官に会うためにインターネットや電話で前もって予約しなければならなくなり、指導教官たちが隔離されているとしてマンチェスター大学の学生たちが不満を抱いている。
マンチェスター大学の学生たちはFacebook(*)の中でグループを作り抗議活動を行っている。また研究者たちからも、「オフィスに閉じこめられてひたすら研究を行っているというのは嘘だ。解雇されてしまった秘書や運営担当職員が以前行ってくれていた面会の詳細を、うまく機能していないオンラインシステムを使って私たち自身が記録しなければならなくなった。生徒たちにはすまないと思うし、スタッフの多くが学生と同様に新システムにいらだちを感じている。トップの管理者たち以外のみんなが損をしている」といった反論がでている。
マンチェスター大学のスポークスマンは問題に関し、「真摯にとりくんでおり、Facebookの状況もおさまってきた。学生組合との話し合いでもすでに済んでいる」と述べている。
他大学でも、同様の問題に学生たちが怒りをぶつけている。
(要訳:OFIASインターン山下 梨江)
*Facebook:ハーバードの学生が作ったソーシャルネットワーキングサービスで、日本のMixiのようなもの。
学者が「経営を批判する権利」を英国は歓迎(THE 2008年1月4日号)
SA lecturer’s‘freedom to criticise’verdict welcomed by UK
南アフリカの高等裁判所が、「学問の自由は大学の経営を批判する権利を含む」という判決を下した。
この裁判は、クワズールー・ナタール大学コーポレート・コミュニケーション学科の理事が、同大学教職員に対し、ストライキ実施に関する情報をメディアに流さないよう求めるメールを送ったことがきっかけで問題となった。同理事が名誉毀損で教員を起訴したこの裁判で、アフリカの高等裁判所は、「学問の自由は、大学の自治や経営者と教員の各役割について自由に議論する権利を含む」とし、理事の訴えを却下する判決を下した。
大学経営について学者が意見を述べる権利を主張する英国の活動団体は、「学問の自由を駆使し、経営者を批判できる十分な知識がある学者は少ない」と指摘し、この判決を歓迎した。
(要訳:OFIASインターン 西村 李歩)
フィードバックは最優先されるべき(THE 2008年1月4日号)
Feedback must be top priority
学生の満足度は概して高いが、改善が求められている。つまり、「学生が大学で得るもの」を大学側が重視し高めることを目指すのであれば、講師陣がより良いフィードバックを提供するよう、フィードバック・システムを改良しなければならないということである。
2007年全国学生調査の結果によれば、コース内容や授業に関し学部生の評価は高いが、彼らの受けているフィードバックに関しては評価は最低であった。特に評価が低かったエディンバラ大学では、迅速でタイムリーなフィードバックの提供、「いつ、どんな形でどんなフィードバックが提供されるかを学生は期待してよいか」を学生に伝えること等々、全体的な改善の一部としてフィードバック・システムの見直しを行うという。
一部では「学生が期待しすぎる」ことを心配する声も上がっているが、学生たちは十分現実的であり何百人もいる学生のそれぞれが詳細なフィードバックを得られるとは決して期待していない。
全国学生調査の結果:
・81%の学生はコースの内容や授業に満足している
・一方、フィードバックが迅速かつ有益であると回答した学生は54%
・エディンバラ大学ではフィードバックに関し迅速かつ有益と回答した学生は36%
・別の、2万2千人に対する調査では、学生の多くが教職員による「助力」が大学選びの中で最も重要な点の一つであると回答
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)