リーチ卿案を受け入れなければ「将来計画案」に取って代わられるか(THES 2007年7月20日号)

Embrace Leitch or lose out to FE, sector warned

2020年までに40%以上の大人に学位レベルの資格を与えるべきとのリーチ・レポートをうけて、政府はカレッジを高等教育機関として認定する方向に向かっている。大学側は50億ポンド予算の技術教育計画を受け入れるか、技術教育をこれまで通りプライベートセクターに任せるか、決断を迫られている。

産学委員会は、「多くの学長が、大学における技術教育はリスクが高いと言っているが、大学がそのような立場をとるなら、プライベートセクターがこの市場を独占していくだろう」と話している。一方、大学側は、雇用者が、現在払わないですんでいるお金を、将来学位を持った労働者を雇ってわざわざ払う気になるだろうか、と懸念を表明している。

現在国会で審議中の「将来計画案Future Education Bill」も大学にとって課題である。現在、ファウンデーション・ディグリー(期間年の職業分野の高等教育コースで、学士号の初期課程と同等のレベル)は大学にのみ学位授与資格がある。カレッジにファウンデーション・ディグリー授与資格を与えれば、大学は技術教育にもなんらかの対応をせざるをえなくなり、カレッジと大学が同じマーケットで競うことになる。「大学とカレッジには、それぞれ異なった役割があり、それらを混同することは間違っている」、とブラックストーン元高等教育相大臣はそのような動きに強く反対している。

(要訳:OFIASインターン 藁科 智恵)

学長、謝罪を「不誠実」として認めず(THES 2007年7月20日号)

Principal rejects 'insincere' apology

Dartington College of Artsの講師Sam Richardsは、University College Falmouthとの合併反対ウェブサイトに「現学長よりも不思議の国のアリスに出てくるキャラクターたちの方が有能」と寄稿して、解雇された。

大学首脳陣は、謝罪すれば解雇は取り消す旨の条件を付けた。これを受けてRichards講師は謝罪文を書いたが、学長は謝罪が不充分であるとしてこれを拒否、誠実な謝罪をするよう再度求めた。しかしRichards講師は、これ以上の謝罪はへつらいに当たると反論している。

(要約:OFIASインターン長谷川 涼子)

ESRC、危険への懸念を「無視」(THES 2007年7月20日号)

ESRC 'ignores' danger fears

ESRC(Economic and Social Research Council経済社会学術評議会)が、昨年の対テロ・プロジェクト計画の修正版「新しい挑戦――ラジカル化及び暴力の批判的評価」案を発表した。しかし、政情不安地域での研究従事により研究者を危険にさらす可能性は依然として存在すると、複数の研究機関が警告している。

今回の修正は、「研究者をMI5(イギリスの諜報機関)のスパイに仕立てるようなものだ」との批判を受けて取り消された原案を引き継ぐものであるが、研究者たちからは「ESRCは専門家の警告を軽視している」「政府の意向や計画関係者の考えに偏っている」などの批判が出ている。だがESRC側は、「修正案は適切な調査に基づいており問題はない」としている。

(要約:OFIASインターン 長谷川 涼子)

大学組合(UCU)、賃金交渉時期に関し闘う姿勢(THES 2007年7月20日号)

UCU set to fight any pay window

学生の卒業を混乱させないよう提案された賃金交渉スケジュールを教員組合側は拒んでいる。

先週開かれた新賃金体系についての高等教育教職員共同交渉会議で、大学組合(University and College Union)は、大学雇用者協会(University and College Employers Association)の要求する賃金交渉スケジュールの明確化を拒否した。大学雇用者協会はこれを遺憾とし、昨年の争議も、初めから学生の卒業という最も重要な時期を狙って行われたと糾弾した。

昨年の争議では、研究者組合が賃金要求を通常より5ヶ月も前に提出し、その混乱が学生の期末試験への追い込みの時期と重なる結果となった。大学雇用者協会は、明確な賃金交渉スケジュールがないと、大学組合がいつでも賃金要求を提出することができ、学生への混乱を引き起こすことになる、と述べている。一方大学組合側は、雇用者側が教員がいつ異議申し立てをできるかを決めるような手続きには賛成できない、としている。また、協定では、2008-2009年度にかけて、最低2.5%の賃金上昇が約束されているが、最近のインフレも考慮に入れられるべきであるとしている。

(要約:OFIASインターン 藁科 智恵)

英国にて大学が学生の権利を制限する動き(THES 2007年7月13日号)

Move to curb student rights

大学で講義が中止されたり内容が変更されたりした場合や、大学案内に書かれていることが履行されなかった場合、学生には補償を求める権利があるが、現在英国ではその権利を制限する法的準備が、大学関係者によって進められている。また、教員のストによって授業が中断されても大学側は責任を負わないということも新法の草案には盛り込まれている。これに対し、学生組合は内容が一方的であるとして批判の声を上げている。

この動きは、学生の権利を重視する新内閣の方針とは逆行するものである。近年、英国では授業料の値上げなど高等教育のビジネス化が進められようとしており、授業料を支払う学生を消費者として捉え、その消費者としての権利を重視する風潮が強まっている。

「大学側が学生の権利を制限しようとするのは、授業料の払い手である学生が自らの権利意識に目覚めることを心配していることの裏返しである」との意見が関係者からは出ている。

学生組合側は、政府が学生の権利を重視する姿勢をとっていることを歓迎しているが、中には、『学生を消費者、教育を商品』として捉える現在の風潮を疑問視する声も上がっている。

(要約:OFIASインターン 須田 丈夫)

研究者、RAE(研究評価)の拘束と闘う(THES 2007年7月6日号)

Academics fight RAE 'lock-in'

RAE(研究評価)の提出期限日まで、研究者は新しい職のために大学を辞めることができない。シェフィールド大学、サウサンプトン大学、エクセター大学などでは、RAE報告書の提出締め切り日である10月31日まで研究者は職を辞すことができないという項目を契約に盛り込み、事前通知期間として1学期以上を要求している。同大学のロバート・クック教授が5月に辞職通知を提出したところ、事前通知期間を満たしていない為、10月31日より前に辞めた場合には契約不履行で訴えると告げられた。クック教授によると、「すべてRAEのため」であり、また少なくとも3人の研究者がこのような「拘束」に遭っていると言う。同大学側は、事前通知期間に関しては研究者組合との合意の上であるとしている。HEFCE (Higher Education Funding Council for England イングランド高等教育財政カウンシル)は、この問題は労働基準法の問題であってHEFCEが果たしうる公的な役割はなく、高等教育機関と研究者の間の話し合いにまかせるとしている。

*RAE (Research Assessment Exercise、「研究評価」):1986年から始められた、英国の4つの高等教育資金団体(HEFCE、SHEFC, HEFCW, DELNI)が、各高等教育機関の研究成果を把握し、ランキングを作成するというもの。そのランキングによって配分される資金が決められる。

(要約:OFIASインターン藁科 智恵)

ブラウン、仕事の技術に焦点(THES 2007年7月6日号)

Brown targets work skills

ブラウン新英国首相は大学を経済成長のための原動力と位置づけ、『イノベーション・大学・技術省』という新しい省の設置を公表した。競争の激しい今日の世界経済において、英国の競争力を強化するという必要性に対応するための大学改革の一環である。英国上院では、英国の絶望的なまでに薄弱な技術基盤を強化改善する上で、高等教育は重要な役割を果たすという意見が出された。

しかし、経済的な視点で有用な技術や研究を過度に重視することは、純粋な学問的研究にとり不利な状況を招き、教育が広く社会に与える公益を軽視することになりかねないとの懸念が存在する。また、一般的な技術は大学で、業務に特化した技術は会社でという現在のシステムから、大学時代から学生に高度に専門化した技術を教えるシステムに移行することには、学生自身そして経済全体が狭い技術の枠に押し込められることにならないかという懸念がある。また、高度知識経済に対応する形でビジネスに通用する実務的な技術を教えることに伴うコストは学生自身、そしてパートタイムで大学で学ぶ学生の雇用者が負担することになるので、資金面での問題も生じている。

(要約:OFIASインターン 須田 丈夫)

経営者側「全国的な給与交渉は無理か」(THES 2007年7月6日号)

National pay agreement is at risk, say employers

英国の大学経営者協会(Ucea)は、教職員組合(University and College Union (UCU))との給与交渉が決裂しそうなことを受け、他の組合とともに包括的交渉に応じるよう強く求めているが、UCU側は拒否している。

Ucea側は、組合が合意を受け入れることを拒むあまり現状を認識していないこと、過去数年にかけて大学教職員の給与は他の公務員に比べ上昇率が高いことなど指摘している。
UCUの方では、全国交渉は賃金基準や条件での合意を達するには最も効果的であるとしながらも、「教員は特殊な職業であり独自の賃金交渉が必要である」として個別交渉の継続を主張している。

(要約OFIASインターン長谷川 涼子)

誇大広告の過剰使用、有害として非難される(THES 2007年7月6日号)

'Damaging overuse' of hype criticised

現在の大学システムにとって最も有害なものは、教育・研究に関する、誤った、また、誇張した主張としての「Excellence」の使用であるとの問題提起が、今週の英国における高等教育学会議(Higher Education Academy conference)で行われる予定である。

ロンドン大学教育研究院(IOE)のDavid Watson教授(高等教育マネージメント)は、大学案内の中における「Excellence」や「World-Class」などの言葉の過剰な使用はそれらの言葉の価値を下げるものであり、大学案内に書かれているようないわゆる「セールスポイント」も、根拠を持たないものが多いと話している。また、そのように誇大な宣伝ばかりするのではなく、きちんとした根拠に基いた、測定・評価が可能な指標を改善を目的に使用していくべきだと述べている。

一方、高等教育広報渉外協会のPeter Reader氏のように、大学は消費者の需要に応える必要があると指摘する者、またグロスターシャー大学のPatricia Broadfoot学長のように「英国の大学の優秀性は全国学生調査によっても証明済みであり「Excellence」という言葉には意味があると主張する者もいる。

(要約:OFIASインターン 刀根 由紀子)