ビジネスと教育(THE 2008年2月21日号)

Business divisions

高等教育機関全般において、大学経営の専門職化により多くの大学に構造的、文化的な変化が起きている。高等教育とは無関係の分野からの大学経営者、事務職員の採用が増えているだけでなく、高等教育全般にビジネス化の傾向が見られる。大学経営者のマーケティング能力や人材管理能力などが重視され、報酬にも影響するようになった。優先事項をめぐって研究者と経営者で意見の対立も生じている。

平均的な米国の大学は年間予算の約10%、アイビーリーグでは20%をマーケティングにあてており、英国も同じような方針をとることになるという指摘もある。バーミンガム大学のビービー教授は、「以前は質の高い研究を行う手段として外部資金を調達していたが、今では資金調達が大学の目的そのものになっている」とし、学術理念が運営方針の後回しにされていると懸念している。

オックスフォード大学のルドル氏は、教育と経営の対立はあるものの、優秀な大学は変化に柔軟に対応し、両者をうまく利用することができると言う。大学という複雑かつ多様性のある教育機関では、教員と専門職員が協力して運営することが望ましいと指摘する。

ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジのハラス氏は、大学運営の「職業化」は、学校管理を専門職として認識することで、具体的な資格が求められ、大学側は人材育成のための訓練も援助すべきだとする。

民間部門などから採用された大学経営者は、ビジネス感覚を生かした新しい視野を取り込むという面で有益だが、意志決定においてコンセンサスを重視する教育機関になかなか適応できないこともある。大学では、人材斡旋業者に高額を払い優秀な副学長や経営陣を採用しようというところでてきている。経営者採用でのミスは将来のビジネス戦略に打撃を与えることになるため、多くの大学は競ってトップ経営陣を確保しようとする。

教職員組合(UCU)など、人材会社を介した採用に懐疑的なところもある。サリー・ハント氏は、「そのようなサービスを考慮する前に、まず内部を見て、なぜ優秀な人材が応募してこないのか、報酬、労働条件、昇進の機会など職員に対する大学の対応はどうかを見直す必要がある」と述べている。

(要訳:OFIASインターン 西村 李歩)