スコットランドのPost-1992年大学、統合へ向かう(THE 2008年7月17日号)


スコットランドのPost-1992年大学(1992年の法改正で大学に昇格した機関)6校が、統合に向けて動き出している。この6校とは、アバティー・ダンディー大学、グラスゴー・カレドニアン大学、ネピア大学、クイーン・マーガレット大学、ロバート・ゴードン大学、西スコットランド大学であり、各学長は、研究の向上と学生の選択肢の幅の拡大のため、この抜本的な改革を進めている。アバティー・ダンディー大学のバーナード・キング学長は、これまでPost-1992年大学に対して十分な資金提供がされておらず、この点についても6大学の間で議論が重ねられてきたとしている。


この統合計画は、圧力団体やラッセルグループ(イギリスの研究型大学19校からなるグループ)のような集団を形成するためのものではなく、従来の組織構造を崩すつもりはないと、各大学長は述べている。しかし一方で、この統合が資金源や運営方針に影響を与えるものであることを明らかにしている。


スコットランド高等教育に関する特別委員会は、中間報告で、統合は各大学の運営コスト削減・効率化を図るものである、と述べている。


(要約:OFIASインターン早野文菜)

海外動向(THE2008年7月10日号)

Overseas briefing
カナダ:助成金の大幅削減
大学への助成金が大幅に削減された。1980年代初頭には学生一人当たり21,000カナダドル、1990年代初頭には、17,000カナダドルの州助成金を受け取っていたのに対し、昨年は15,000カナダドルとなったとグローブアンドメール紙が報じた。カナダ大学連盟の調査によれば、カナダの大学への学生一人当たりの助成金額はアメリカの大学より8,000カナダドル少ないという。

インド:デリ大学での入試合格ラインは95%
インドの一流大学の受験競争の激化により、90%以上の正答率でも不合格となる。デリ大学では、人気の高いコースの合格ラインは正答率95%だったという。ハイヤーオーダーシンキングスキルテストの結果が予想以上に悪かったことがこの状況に拍車をかけている。

アメリカ合衆国:国境が大学の結束を分かつ
テキサス州にある大学のキャンパスが国境のフェンスで分割された。同大学はメキシコ・アメリカ戦争の戦場となったリオ・グランデに近く、様々な形でアメリカとメキシコの友好関係を築くことを使命としてきた。この事態に対し、同大学大学の方針を全く無視するものだとこの計画を批判している。

ヨルダン川西岸、ガザ地区:銀行の先駆的な試み 教育ローン制度を整備
ヨルダン川西岸とガザ地区で学生ローンプログラムが立ち上げられた。初の試みで、パレスチナ銀行が資金を提供し、年間8,000人の学生に最高1千万ドルを提供する。世界銀行によれば、この制度は教育ローンを返済するという文化を築くとともに、大学に安定した授業料をもたらすという。

中国:入試不正に関与した政府高官を逮捕
国立大学の入学試験の不正に関与したとして、地方政府高官が逮捕された。政府によれば、偽造登録文書の作成や替え玉受験が行われたという。その中の一人間違えて自分の名前を答案用紙に記入したことから事件は発覚した。

オーストラリア:家政婦のように扱われる非常勤講師
大学の授業の80%を非常勤講師が担っていると報告された。非常勤講師に依存しているというこの状態は、まるでビクトリア時代に中流階級の家庭が家政婦に依存していた状態のようであるという。しかしこの傾向を覆すのは難しいといえる。
(要約:OFIASインターン 前田葉)

イギリス、大卒留学生に二年間の就業ビザ付与(THE 2008年7月10日号)

Two-year graduate visa gives UK prestige a fillip abroad

イギリスの大学を卒業した留学生に付与される就業ビザの有効期間が、従来の一年間から二年間となった。留学生支援団体のUKCISA責任者ドミニク・スコット氏は、留学生は卒業後も本国に帰るよりイギリスで就職することを望んでいるので、この変更は留学生のイギリスへの流入を促進すると考えている。

一方でこの新しいシステムは依然として議論を呼んでいる。より厳しい規則や報告義務が、学生に敬遠されるのではないかとの懸念もある。また、二年間有効のビザの施行によって、大学側は雇用者の理解を得、留学生に多くの就職を斡旋するために、更なる努力をしなければならないとされている。

留学生への対応は、大学にとって、「家内工業」からより大きなビジネスへと変わってきている。そして政府主導ではなく、大学自身がイニシアチブをとるようになってきた。現在イギリスは、留学生から40億ポンドの利益を得ている。イギリスの教育水準は世界トップレベルと言われるが、他国と比較し、今一度その強みを問う段階に至っていると、スコット氏は述べている。

(要約:OFIASインターン早野文菜)

研究費の効果的な使用法(THE 2008年6月26日号)

Spending research grants wisely

会計調達部の協力を得て研究費を効果的に使うには

研究費を獲得することに成功すると、それをいかに有効に使うかという新たな課題が生じる。研究者の陥りがちな罠は、すべて自分で行わなくてはならないと思い込むことだと、大学会計調達事務官連盟のジェニー・ブッシュロッド女史は指摘する。EU法の改正や技術革新などにより、調達自体が以前より複雑化してきているため、各機関の会計調達部と、研究者との連携強化が必要になってきている。

大学の調達担当者からは、具体的に以下のようなアドバイスが寄せられている。
・ 研究資金の出所によって会計方法は様々。特に、会計期限に留意し、早めの計画が必要。
・ 研究費の獲得の後、早い段階で研究に必要なものを明確化する必要あり。
・ 所属機関・EUの会計調達規則の遵守。
・ 調達業者の選定に際し、入札制の採用。営業担当との過度の馴れ合いや癒着の回避。
・ 契約書作成は、研究者もしくは会計調達部主導で。
・ 機材の長期的な維持管理コストの考慮。
・ 説明責任への留意。

(要約:OFIASインターン前田葉)

女性学者、男性優位の学界を批判する(THE 2008年7月10日号)



今日では多くの女性が大学に進出しているが、ジェンダー問題は根強く残っている。ロンドンメトロポリタン大学政策問題研究所のキャロル・リースウッド教授は、フェミニズムは女子学生数の増大は果たしたが、依然として男性優位の傾向が強いとしている。大学職員にも、性別による格差が存在する。教授職についている女性はわずか17.5%にすぎない一方、サポートスタッフの93%は女性で占められている。「アメリカでは性別による給料の格差も1970年代から変わらずに存在する」とリースウッド教授は述べている。同教授によると、女性の高等教育への進出は、男性への脅威とみなされている。また、フェミニズム研究やジェンダー問題は過小評価されているという。


ゴールドスミス大学のアンジェラ・マクロビー教授は、女性は知識経済において重要な人材であると述べている。そして、今後は単純に女性を数多く大学に送り込むだけでなく、どのような教育を受けさせるのかを考慮する必要があると主張している。


同教授は男女平等の考え方を取り入れる「ジェンダー・メインストリーミング」を、女性の権利の保護には役立っていないとして批判している。


フェミニズムは多くの学術論文で取り上げられているが、「個人的な興味」に留まっており、反感を呼ぶことも多い。「学問の世界は、日常生活の場で取り上げられないことが、議論される場になっている」とマクロビー教授は述べている。


(要約:OFIASインターン早野文菜)

海外動向(THE 2008年7月3日号)

Overseas briefing

カナダ
宣誓する医学研究者

医者は倫理に関する宣誓を行うが、研究者は行ってこなかった。しかし、トロント大学でそれが変わりつつある。そこでは、医学研究者が荘厳な儀式に参加する。その宣誓は、金銭的利益、名声によって研究における倫理が揺るがされないことを含んでいる。

アメリカ合衆国
教授が剽窃で解雇される

コロンビア大学の教授が、剽窃と公的調査を妨害したことにより解雇される。コロンビア・ティーチャーズ・カレッジの心理学と教育学のマドンナ・G・コンスタンティン教授は、元同僚と二人の学生の研究から剽窃したとされている。しかし、コンスタンティン教授は、それらは元々彼女のもので、彼女が黒人であるということで大学は彼女に対し偏見を持っていると主張した。大学は、2月に解雇勧告をしたが、彼女は拒否し、解雇されることとなった。

スイス
コリダーは大災害を引き起こさない

世界で最も強力な素粒子物理学の実験から、地球は危機に瀕していないということが結論された。その研究は、ジェノヴァのヨーロッパ素粒子物理学研究所で、危機を予測できるかどうかに触れている。批評家は、まもなく開設される、陽子を超高速で衝突させる施設に作られた小さなブラックホールが地球の存続を脅かすのではないかと懸念を示しているが、ヨーロッパ素粒子物理学研究所は、確認できる危険はない、としている。

アメリカ合衆国
銃撃を想定した訓練を職員が受ける

「サバイバル・トレーニング」が、アメリカ合衆国の大学で標準になりつつある。クロニクル誌高等教育版と国中の銃撃想定を促す機関によれば、サバイバルトレーニング市場は、熟している。現在、50以上のカレッジが元合衆国防衛省の専門家によって開発されたプログラムに申し込んでいる。

インド
「偽もの」であることを否定する大学

インドの高等裁判所は、政府の委員会と「偽もの」とされた大学との調停を行った。インディアン・インスティテュート・オブ・プランニング・アンド・マネージメント(IIPM)の弁護士は、IIPMは企業家に価値ある経営訓練を提供しているし、「世界中で」認知されていると主張している。

ウガンダ
不品行阻止のためのミニスカート禁止

ウガンダのマケレレ大学では、講師が成績の見返りとして、性交渉を求めているというallAfrica.comによる報道に対し、学生と職員の道徳を高めるために、ミニスカートや「不適切な」装いを禁止した。心理学学部長ピーター・バグマ氏は「ミニスカートやタイツを撲滅することにより、不品行を奨励しない新たな文化に、学生が対応できるようになる」と述べた。調査によると、この大学の10人中4人の女子学生が、講師から性的関係を要求されたという。しかし、大学の若い職員は、女性の露出度の高い服装は、男性に対するセクシュアル・ハラスメントであると述べている。

(要約:OFIASインターン藁科智恵)

評価を上げ批判を避けるよう圧力をかけられる外部審査員(THE 2008年6月26日号)

External examiners under pressure to uphold marks and avoid criticism

研究者は、外部評価システムが弱体化しており、もはや目的と合致していないという危惧を表し始めている。バッキンガム大学の政治学、現代史のアルダーマン教授は、マネージャーが研究者に対し、大学の評価を上げるために、成績の悪い学生の成績を上げるように圧力をかけているとして告発した。
このアルダーマン教授の告発がきっかけとなり、他の研究者によっても、外部評価システムが弱体化しているさまざまな例が挙げられた。

ある研究者は、外部評価委員会に参加し、自分の機関では不可を付けるような答案に対し、優がつけられていたが、それを変えること権限は自分にはなかったことを述べ、大学が無責任な学生評価を行っていることを指摘した。

ある大学では修士課程の部長が、低い評価を与えた外部評価委員を解雇するように圧力をかけたという。

このような現状に対しアルダーマン教授は、学的水準を保つために外部評価システムを廃止しなくてはならないと述べた。

(要訳:OFIASインターン藁科智恵)

ブラッドフォード大学、人種問題調査団を迎える(THE 2008年7月3日号)

Bradford calls in external race adviser

ブラッドフォード大学保健学部が、学内において人種差別問題が存在することを認め、この調査のため、専門の調査団を迎え入れた。

同大学は、看護学科の教授二人に対する人種問題について謝罪をした。マーク・クリアリー副学長は、「人種差別の結果、彼らにつらい思いをさせてしまったことを、深く謝罪する」と述べている。

大学における人種差別撤廃を唱えるアーチボン教授は、2000年より、同教授とその他5名の教授に対する人種差別について訴えていた。2007年には委員会の調査も行われたが、人種差別の事実は認められなかった。しかし2008年1月、上訴委員会によってこの決定は覆され、今回、副学長が謝罪するに至った。元看護学科長で、現在ハダーズフィールド大学保健社会福祉センター長のアニー・トッピング教授は、人種差別行為を行ったとして、委員会に非難されている。

大学における人種差別撤廃と雇用機会均等を提唱するロジャー・クライン氏は、外部より調査団を招いた副学長の決断と、謝罪を賞賛している。

(要約:OFIASインターン早野文菜)

海外動向(THE 2008年6月26日号)

Overseas briefing

オーストラリア
研究開発の支出が25%の伸び
オーストラリア大学の研究に対する支出が近年伸びている。オーストラリア統計学事務所のデータによると、研究開発に対する支出は2004年から2006年にかけて24.9%伸びている。この伸びは、医学的研究に対する予算の増大が影響しており、2010年までには、国立医学健康研究センターに対する資金は15年間で500%増大することになるだろうとオーストラ
リアの新聞は報じている。

イラン
性の主張に対する抗議
副学長のセクハラの主張に対して、イランの大学で何千人もの学生による抗議が行われた。先週、ザンジャン大学で、理事会の辞任を要求する約3000人が参加する座り込みが行われた。また、彼らは女子学生に対するハラスメントに対しての高等教育大臣の公式の謝罪を要求している。

アメリカ合衆国
動物の権利保護運動が拡がる
動物実験に関わる大学に圧力をかけることを目指し、生体解剖反対の運動家によって、合衆国の研究機関でない高等教育機関が攻撃の的になっている。彼らの新しい戦略は、最近11の非研究機関によって署名された、動物を深刻な苦痛にさらさないという誓約を含んでいる。動物愛護協会によって起草されたその誓約書は、300の非研究機関に送付されている。ザ・クロニクル高等教育版は、これは、高等教育機関の中から、動物権利保護運動を盛り上げようという意図だと報じている。

アメリカ合衆国
詐欺師の贈り物が戻される
大学に対する50万ドルの寄付が詐欺師の元に戻された。去年銀行の破産の前日に自殺したボブ・マックリーンは、ミドル・テネシー州立大学に彼の6700万ドルの遺産のうち100万ドルを寄付していた。出来る限りのお金の回収を目指す裁判所職員は、大学に57万ドルを返還することを要求した。

中国
試験での不正行為の数減少
中国政府によると、世界で最も大規模な大学入試における不正行為の数が減少したという。今年は1038万人によって受験され、2645の不正行為が発覚した。この数は、去年よりも約800減少しており、ここ10年間で最も少ない。教育相のスポークスマンの王氏によると、今年は学生のIDのチェック強化、試験監督の増員等を行ったという。

インド
社会的教養に欠ける政治家
インドの研究者は政治家を国の中で最も非社会的なグループとした。インド調査センターの社会的教養の調査は、インドの大学の1100人の研究者によって行われた。結果として、インドの政治家の社会的教養は、ジャーナリストや学校の教師よりも低い、「極めて低い」とされた。ある研究者は、エコノミック・タイムズ紙に政治家はしっかりした教育を受けていなく、政策を作る人々がこのような状態であることを嘆かわしいことだと語った。

(要約:OFIASインターン藁科智恵)