海外動向(THE 2008年10月9日号)

Overseas briefing



インド


「革新」が進歩の鍵


インド全国技術教育審議会元会長のナタラジャン氏は、教育の質に関する第6回会合において、インドの高等教育は「革新」か、或いは「滅亡」かの瀬戸際にあると述べた。同氏は、学生が卒業後はすぐに就職しなければならないと感じていることが、インドの大学における研究の妨げとなっていると指摘している。学生がどれ程の知識を得ているかではなく、得た知識を使って何が出来るかを重視し、インプットよりアウトプット志向であるべきだと、ナタラジャン氏は主張する。




カナダ


学長、最後の贈り物


アルバータ大学ニューウェル学長が退職の折、北米先住民族の学生と教職員の会合の場所をキャンパス内に創設する為に、100万カナダドル(52万6千ポンド)を寄付した。同氏は、先住民族はマイノリティとして不利な集団であるが、教育によってその差が改善できる、と述べている。この寄付により、同大学の2008年度の寄付金額は5億カナダドルを越え、トロント大学に次ぐ多額の寄付を得ることに成功した。




オーストラリア


天文学者、主役になる


天文学者ペニー・サケット氏が、常勤のオーストラリア最高科学責任者に指名された(注)。同氏は11月より、非常勤として2年半勤めたピーコック氏の後任として同職に就くが、現在勤めているオーストラリア国立大学にも在籍は続ける予定である。サケット氏は女性科学者の会に所属し、英国王立天文学会の特別研究員でもある。




韓国


若者人口、減少傾向


韓国では、高齢化が大学に影響を与えている。若者人口の減少のため、一部の大学では、入学者数が定員の70%を下回る定員割れが起こっている。東亜日報によると、平均入学率は昨年度の95.8%から94.3%と下落し、首都ソウルから離れるほどその影響は深刻である。




アメリカ


イラク人研究員、差別を訴える


イラク人イスラム教徒の研究員が、礼拝用敷物に汚物を投げつけられたとして、テキサスA&M大学を訴えた。ムンディル・リダ氏とサイーダ・アリ・ムセン氏は、同大学生殖科学研究所で体外受精を専門に研究している。両氏は人種と宗教で差別を受けてきたとし、同大学と一部の部署、及び5人の元同僚を相手に訴訟を起こしていると、ニューヨークタイムズ誌は報道している。




アメリカ


代替療法、停止される


マイアミ大学チームによって行われてきた代替療法の研究が、療法に伴う危険性の説明が不足していたとして中止された。1500人の心臓病患者がこの研究に協力していた。この研究はビタミンやミネラル、キレート化合物の投与を行い、静脈注射によって血中のカルシウムを増加させるというものである。しかし、アメリカ心臓協会は、効果は立証されておらず、肝機能不全等の副作用を起こす可能性があると警告している。




注:オーストラリア最高科学責任者職が常勤となるのは、1996年以来初のことである。





(要約:インターン 早野文菜)