教員に対し大学への忠誠を求めるイングランド高等教育カウンシルの報告(THES 2007年11月30日号)

Staff loyalty key to Hefce report

イングランド高等教育財政カウンシルHefce(*1)のガバナンス・マネジメント戦略委員会はその報告書において「教員は自分の研究分野に専念しがちであるが、高等教育機関の戦略的なニーズにも注意を払い責任を持つべきである」と発表した。報告書は研究者に対し、ビジネス専門用語やビジネス的文化にひるむべきではないと警告し、高等教育機関運営におけるリーダーシップの意味が十分に理解されていないと指摘している。学問とビジネスは密接に結びつけられるべきである、とグラント・ソントン国際会計事務所(*2)のビジネスアドバイザー教育部門長デビッド・バーニーズは述べている。

この点に関しては研究者の間で賛否両論が噴出している。賛成者の間には「機関の運営は組織が業務を執行するのを助けるためのものであり、組織をコントロールするためのものではない」「大学もまた巨大かつ複雑なビジネスとしてベスト・プラクティスをめざすべきであり、意思決定・組織戦略においては顧客、つまり学生を中心に据えて考えるべきである」などの意見が上がっている。しかし一方「学会やその役割の質低下につながるのは明らか」「押しつけであり、学会には受容しがたい」「組織に忠誠を尽くしたくて研究者になった者はいない。研究者が優先させるべきは学生と自分の研究分野である」との反対意見もある。

「大学はビジネスとは異なるものの、入学者リクルートやマーケティング、資金集めなどにおいては実務的なアプローチを取るべきである。」との意見、「教育・研究とビジネスは密接に絡み合っており、両者を切り離すことはできない」との意見も出ている。

(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)

*1: Hefce…イングランド高等教育財政カウンシルHigher Education
Funding for Englandの略称。教育と研究に資金援助分配を行うイギリスの
機関。
*2: グランド・ソントン国際会計事務所…110カ国に520の拠点を持ち、会計・
税務・企業経営全般のコンサルティングを行う監査法人。