社会が異議を唱える権利(THES 2007年11月16日号)

Research: society has right to say “no”

倫理的な理由で社会から受け入れがたいとされる分野の研究をすすめるため、イギリス政府は科学者と協議を進め、科学政策の「新たな合意」を形成する必要性を表明した。

倫理上問題となり得る分野の研究は、科学者が適切だと判断しても社会の同意を得られないことがあるため、政府と科学者の意見の相違は研究の実現にも影響する。協議は、この分野の研究の理解と社会的容認を高めることを目的とし、また、科学の経済的・社会的重要性の認識し、実質的で質の高い科学研究者を支援する社会構想の形成を目指す。

科学協議会や英国科学振興協会は、科学とイノベーションは今後の社会の発展や経済成長に不可欠であり、研究を怠ることは経済・社会発展を阻害し諸外国に遅れをとることになると懸念している。しかし、研究は倫理的その他の問題を考慮し、慎重かつ法的手順に沿って行う必要があるとも認識している。

今後研究促進と問題対応のジレンマにいかに取り組むかが課題となる。科学政策の新ビジョンは、従来の「科学の発展、規制、利用に自信を持てる社会」から、「質の高い科学研究者の貢献を反映する社会」になる予定だ。

要訳:OFIASインターン 西村 李歩