'Surplus' in arts may spur shakeout
人文学系卒業生の供給過剰状態に対処するため、大学はその学位が雇用者によってどれくらい評価されるかによって、分野ごとに非一律に授業料額を設定するべきだと教育経済学者が主張している。
教育協会のアンナ・ビグノールズ氏は、人文学系の学士取得者はまもなく過剰になり、人文学学位の価値はそれを得るためにかかった学費よりも下がってしまうだろう、と分析し、また、もし授業料が専攻ごとに設定されないならば、特に2009年以降に授業料値上げの上限が引き上げられたら、学生はすぐに就職に結びつかない専攻から離れていくだろうと述べている。高等教育政策協会のバーラム・ベクラドニア氏もそれに同意し、市場を考慮に入れた授業料設定が必要だとした。
一方、高等教育省のビル・ランメル氏は、英国の学士取得者は平均して、高等教育セクターの拡大にも関わらず大きな利益を得ているとした。
(要約:OFIASインターン 藁科 智恵)
人文学系の「余剰」は合理化に拍車をかけるか(THES 2007年9月7日号)
論文に学部名をきちんと書くよう教授に指令下る(THES 2007年9月7日号)
Staff told to sharpen up citations
キングズカレッジロンドン(ロンドン大学のカレッジの一つ)の教授陣は、学長から次のようなお達しを受けた。「論文を書くときには、自分の所属する学部名を間違えないように。」このような指令が下った背景には、1990年代のロンドンの大学の大規模な再編がある。再編の結果、大学の組織が複雑に入り組んでしまったため、自分がどの大学・学部に所属しているのか研究者の間に混乱が生じている。そのため、キングズカレッジのある学部が発行した論文のうち、学部名が誤って書かれていたものが47%もあった。
この論文に書かれている学部名は現在、大学にとって死活問題といっていいほど、非常に重要な意味合いを持っている。なぜなら大学で行われている研究の評価は論文の引用件数で決まっており、この論文引用件数は大学に研究資金を配分する際に重要な判断基準になっているからだ。しかし、もし論文に違う大学・学部名が書かれているなら、大学の評価が狂ってきてしまう。
(要約:OFIASインターン 須田 丈夫)
教養ある社会はピアレビューを擁護(THES 2007年9月7日号)
Learned society defends peer review
今週発表された英国学士院(British Academy)報告書によると、英国学士院は英国で伝統的にとられている研究者評価手法であるピアレビューを支持する考えである。また、ピアレビューはコストと時間を食うとの批判が高まっていることに対しては、レビュアーへのよりよいトレーニングと報酬が要ると述べた。
報告書は、人文学・社会科学分野での評価手法として論文引用回数・助成金交付回数などの測定規準を用いることに警鐘を鳴らしている。人文学・社会科学分野では論文や学術誌も少なく、成果が認知されるまでの期間が非常に長く、上記の測定規準ではこれらの分野での成果を正確に測ることはできないため、不完全にしろ有効な手段であるピアレビューの付加物として用いるべきだというのがその理由である。
政府は12月に、科学・技術分野では測定規準のみを評価に用い、芸術・人文学・社会科学分野では測定規準と「簡単な」ピアレビューを併用することを承認した。詳細は今月後半に明らかになる予定である。
しかし各大学やRAEではピアレビュー活動にほとんど力を割いておらず、新しいレビュアーが育ちにくい状況である。ある関係者はこれについて「『最も優秀な研究者は、専門分野の成果動向に目を向ける必要から常に調査機関のピアレビューに従事している』という事実が信じられていないためだ」としている。
(要約:OFIASインターン 長谷川 涼子)
大きな変化と借金が失望の源に(THES 2007年8月31日号)
Drastic change and debts may prove discouraging
ベッドフォードシャー大学法学部2年のHaannah Osunsinaさんによれば、黒人の学生の成績が比較的低いのは大学への相反する感情に起因しているという。移民を親に持つ彼らは「勉強すればよい収入を得られる」という両親の信念に従って大学に「行かされている」という意識が強く、また、学生は学位をとってもいい収入が得られない例を身近に見ており、借金やその後の就職の難しさが彼らのやる気をそいでいる、と言う。
彼女自身、大学がサセックス大学への遊学を認めてくれたことで大いに勇気づけられたものの、同じような境遇で自律的学習を求められた学友の何人かが環境の激変に耐えられず、結果留年してしまったというマイナス面も目にしている。「個人指導教員がもっと個々の学生に目を配り、学期末に彼らの頑張りをフィードバックしてくれれば、学生たちは誰かに励ましてもらっていると感じることができるのではないか」と示唆している。
(要約:OFIASインターン 長谷川 涼子)
大学はまだ別世界:マイノリティ学生の現状(THES 2007年8月31日号)
For some, campus is still another country
民族的少数派であるアジア人学生は、白人学生に比べて取得学位レベルが低いだけでなく、大学に対する満足度も低い実態が、2005年度と2006年度の全国学生調査を分析した英国高等教育資金評議会(Higher Education Funding Council for England)により明らかにされた。HEFCEは、民族的少数派の学生の不満と彼らへのサポート不足を改善させる必要があるとしている。
この問題の背景には、こうした学生がよく抱える貧困だけでなく、民族差別もあるとされる。人種的平等委員会(Commission for Racial Equality)関係者は、OB会が保守的であり、マイノリティのスタッフがいくらもいない大学があると述べている。黒人学生にも厳しい状態で、黒人学生より黒人の清掃スタッフの方が多い大学がいくらもあるという。
全国学生連合(National Union of Student)の担当者によれば、多くのアジア人学生は貧しく、親元から通学せざるを得ない。また、学業と仕事を並行させているため大学生活を満喫することができない。さらに、周囲に同じアジア人学生が少ないため、孤立感とサポートへの不安を抱えている。それらのことが不満の下敷きになっているという。
民族的少数派の学生へのこうした調査は始まったばかりで不明点も多く、今後も調査とサポートが必要とされる。
(要約:OFIASインターン 長谷川 涼子)
ノーベル文学者、英文学部閉鎖を主張(THES 2007年8月31日号)
Close English departments for benefit of nation, says Naipaul
2001年のノーベル文学賞受賞者であるヴィディア・ナイポール卿は、サンデータイムズ紙の取材に対し、大学は英文学部を閉鎖すべきと述べた。しかし、英文学の研究者はこれに対し、議論好きな小説家の単なる挑発にすぎないと、受け流している。
ナイポール氏は英文学部の閉鎖は「英国民の知的生活の質を大いに向上させ、人的資源の無駄遣いを減らす」と主張。また、「学者は押しつけがましく自説をまき散らしており、彼らの本は英文学が大したものであると学生に思い込ませている」、「英文学の専門用語は中身の無い思想を取り繕っているだけ」と非難した。また、大学は測定可能な事実のみを扱い、科学だけを教えるべきと述べている。
ほとんどの英文学の専門家はこの意見を無視している。ある文学者は「彼の意見は論理がはっきりしていない。学者の分析の手法を非常に心配しているようだ。きっと学者からの批評に傷ついているのだろう」と述べた。別の学者は「英文学部がなかったら彼は有名になれなかっただろう」と述べた。
(要約:OFIASインターン 須田 丈夫)
講師が携帯メール世代をうまく活用(THES 2007年8月31日号)
Lecturer taps into the text generation
ケビン・リンチ氏は、彼の講義中に、学生が携帯電話を取り出し、メールを打ち始めても気にしない。なぜなら、彼がそうするように頼んだからだ。
リンチ氏は、リーズ大学で歴史を教えているが、講義中に彼の質問に対する意見回答を携帯メールで送るようにさせている。送られてきたメールは、教室のスクリーンに映し出されるようになっている。これによって手を上げて意見を求めるよりも多くの反応を得ることができている、という。
近年、リーズ大学では、商業的目的からメールシステムを試行しており、大量のメールがローコストで一斉に送れるようになっている。
(要約:OFIASインターン 藁科智恵)
翼を広げる元ポリテクニック(THES 2007年8月31日号)
Former polytechnics spread their wings
ジョン・メイヤーによって、ポリテクニック(実用的コースを備えた英国の総合高等教育機関)が、「新型大学」になってから15年が経過した。英国の高等教育に起きた最高のことであるとも最悪のことであるとも言われている。エリートのバリアをなくすことに重点をおいたこの変化は、左翼のシンクタンクによって考えられたと思いきや、保守的な政府によって主導されたものだった。
ポリテクニックの校長の中には大学という名称を掲げることに反対していた人々もいたが、多くの校長はそれに賛成していた。また当時のキャンペーンのスローガンとして、「名前は変わったが中身は変わらない」という言葉が用いられた。しかし、ほとんどのポリテクニックは、これを機会に従来の大学のように、研究に重きを置く方向に動いた。ポリテクニック校長連合会の元理事長ロジャー・ブラウン氏は、「これを象徴しているのが、ほとんどのポリテクニックの校長が英国大学連合への入会を急いだという事実だ。私たちが全く新しいセクターを創出しようとしているということを認識するためにも、全く別の教育機関を作った方が良かった。」と述べているが、「新しい大学を作ったことにより多様性の増加の面で成功した。」とも付け加えた。
新しい大学では、学生数が急激に増加しているが、教員に対する学生数増加の側面もある。デモントフォート大学(元ポリテクニック)のネイル・ウィリアムソン氏は、学生数増加によるスタッフの労働負担は大きく、古い大学よりも経営上のアプローチに力を入れる傾向がある、と述べている。しかし、そのアプローチによって、新しい大学が政府の方針や高等教育市場の急速な変化に対応できているのだとする人々もいる。また、ニューマン高等教育カレッジの校長は、新しい大学はさらに細分化していくだろうとしている。
教育協会の高等教育学のロン・バーネット教授は、新しい大学は、あれこれなりふり構わずの状態で、得られるものを得るために方向が定まらないまま進んでいる、と述べた。
(要約:OFIASインターン 藁科智恵)
大成功:メディア研究が、無意味な専攻のレッテルを返上(THES 2007年8月31日号)
Runaway success: media studies overcomes 'mickey mouse' tag
もし、新しい大学の発展に関連がある専攻があるとすれば、それは、メディア研究であろう。すべてのくだらない専攻の母であるとされてきたが、最近の比較的良い就職率などから、メディア研究が地位を得はじめている。高等教育の芸術・デザイン・メディアの科目センターのデータによると、1997年から2006年の間に、フルタイムのメディア研究の学部生が344%増加している。グラスゴー大学のクリスティン・ゲラグティー教授は、ポリテクニックが大学になる際、大きな設備を用意せずに新しいことをしたいという学生の要望に応えられる専攻を必要としていて、それがメディア研究であった、と述べた。
(要約:OFIASインターン 藁科智恵)
オクスフォード・ブルックス:伝統的大学を相手に善戦(THES 2007年8月31日号)
Oxford Brookes: giving the traditionals a run for their money
オクスフォード・ブルックス大学は、新しい大学を型にはめるのが難しいことを示す例となっている。前副学長も現副学長も、研究ランキングの評価を重視していることを明言し、それは正しい目標であるとしている。前副学長クリーヴ・ブース卿は、ポリテクニックが大学と全く違った使命を持っているとか、ポリテクニックは職業的で大学はそうではないと思ったことは一度もないとしている。2001年の研究評価では、ブルックスの歴史学は最高評価を得ていて、ランキングでは、いくつかの古い大学よりも上位に位置している。この成功は学生数にも反映しており、1992年に 10000人だったのが、2006年には、19000人となっている。
(要約:OFIASインターン 藁科智恵)