School grades are key to university achievement
英国在住で、2004-2005年にかけて18歳になった公立学校に通う60万人の生徒の学術到達度の調査の結果、成績が考慮に入れられれば、より劣悪な社会経済的環境にある生徒も、よりよい環境にいる生徒と同じように進学し、同じレベルの大学に進学する傾向にあるということが明らかにされた。
ロンドン大学の教育、財政学の機関に所属する研究者たちは、貧しい生徒は、より達成度の低い中等学校に進む傾向があり、学校レベルでの達成度に対する取組みが大学進学率を高める上で鍵となるとした。
アンナ・ヴィグノールズ氏は、この研究により貧しい環境にある生徒は大学に行かない傾向にあるということが明らかになったが、この点が重要であると述べている。調査により、より貧しい学生は大学を中退する傾向にあることも明らかにされた。
この研究は、抽出ではなく、11歳から19歳の生徒集団を追跡調査した高等教育への参加に関する初めての調査である。
(要訳:OFIASインターン藁科智恵)
学校の成績が大学への進学の鍵(THE 2008年6月19日号)
海外動向(THE 2008年6月19日号)
Overseas briefing
ガザ
イスラエルが7人の学生を米国への出国許可
米国で勉強するためにガザを離れるパレスティナ人学生への制限が強化された。フルブライト奨学金を得た7人の学生はその機会が奪われそうになったが、イスラエルは、特別な出国許可を出すことに同意している。しかし、海外の奨学金を受けたにもかかわらず、出国段階で足止めされている学生が何百人にも上るとニューヨークタイムズは報じている。イスラエルの政府職員によると、限られた数の出国許可は出されるだろうが、およそ600人の学生が出国出来ないことになるだろうとしている。
オーストラリア
ニュー・イングランド大学の副学長アラン・ペティグルー氏は、同大学学長ジョン・カシディ氏によって「昇任」を提案された後、信任投票を受けた。両者はペティグルー氏が学長によって推進されてきた変化の速さに対し反論したことから、険悪な関係になっていた。カシディ氏は、あるインタビューにおいて魚を売るのも、フライドポテトを売るのも、教育を売るのも同じだと発言し、研究者の反感を買っているという。
アメリカ合衆国
殺人隠蔽に対し35万ドル
2006年12月22歳のローラ・ディキンソンがイースタン・ミシガン大学のキャンパスの宿舎で死体で発見され、検察は21歳の男性を殺人の容疑で起訴し、終身刑となった。大学がキャンパスにおける安全情報の開示という州の法律に違反したとして、同大学は35万ドルの罰金が科された。
中国
卒業生の財布を狙う大学
Forbes.comによると、中国のエリート大学は、今まで公的資金と学費だけで運営されてきたが、初めて卒業生の寄付を募り、「寄付文化」を発展させようとしている。フダン大学は、収入の5%を卒業生から得ている。
インド
女性のためのIIT計画の大学機関
女性だけの科学技術の教育機関の計画が進行中である。IITは、工学技術のような分野においての国の技術基盤を強化しようという動きの一部である。科学技術は、いまだにインドにおいて男性が支配的な領域であり、女性は10%を占めるのみである。IITカンプールの教授は、女性だけの教育機関を作ることにより、キャリアとして科学技術を選択する女性が増えればと語っている。
アメリカ合衆国
密通により講師が解雇
アリゾナ州パラダイス・バレー・コミュニティ・カレッジのマイケル・トッド氏は、同機関の学生アンドリナ・ツィーグラー氏(19)が、トッド氏の自宅でコカインの多量摂取により死んだことにより、停職処分を受けていた。警察は、トッド氏は、彼女の死とは関係ないとしたが、大学の運営委員会は、学生との恋愛関係を禁じている学則に違反したとして、トッド氏を解雇した。
(要訳:OFIASインターン藁科智恵)
より高いIQは研究者を無神論者にする(THE 2008年6月12日号)
High IQ turns academics into atheists
インテリジェンス誌に、ウルスター大学のリチャード・リン教授による、高IQと宗教的信仰の欠如には強い相互関係があるという記事が掲載される。同教授は以前、知能と性別と人種間の関係の研究によって議論を醸している。この記事で、リン教授は知的エリートには宗教的信仰を持った人が少ないと述べている。
リン教授がTHEに語ったところによると、ほとんどの西洋諸国では20世紀に入り、人々がより知的になるにつれて、宗教的信仰の低下がみられているという。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミックスのアンディ・ウェルズ講師は、この二つの間の相互関係は因果関係であるとはいえないとしている。
ロンドン大学の宗教と現代社会研究センター長のゴードン・リンチ氏は、宗教的信仰の低下は、より広い社会的・経済的・歴史的観点から捉えられる必要があり、宗教が原始的だという単純化は、生産的ではないとしている。
リーズ大学神学部アリスター・マックファドイェン講師は、リン教授の主張には西洋文化帝国主義とアンチ宗教の感情が表れていると述べている。
(要訳:OFIASインターン藁科智恵)
海外動向(THE 2008年6月12日号)
Overseas briefing
米国
医者の特典が調査される
米国の医学部は、医薬会社から医者や研修生への賄賂を規制できていなかったことに対し、批判を受けている。ニューヨーク・タイムズに掲載された米国医学部学生組合によれば、5校に1校の割合で利害の衝突に関する方針を見直しているが、いまだにほとんどがガイドラインを明確にしていない。
オーストラリア
批評が研究を麻痺させる可能性
オーストラリアの研究者のグループは、政策批評が、ラッド政権の研究・教育に対する怠慢を引き起こしかねないと警告した。オーストラリア科学アカデミーのカート・ランベック氏は、批評の専門分野は飽和状態にあると述べている。
オーストラリア
言論の自由を守る組合
メルボルン大学は、政府職員に侮辱的な発言をした講師に対し懲戒処分を行ったことにより、労働組合から、非難を受けている。エイジ紙(The Age)が入手した資料によると、大学は、政府に対し、大学の総意と講師の非難とは全く別だということを書面において述べている。
カナダ
学生がフェイスブックを告訴
カナダの法学部学生がフェイスブックを訴えた。オタワ大学の学生は、ソーシャルネットワーキングサイトが、会員に個人情報が第三者の営利団体に公開されるということを知らせておらず、その許可もとっていないと主張している。彼らによれば、フェイスブックは、22のカナダの個人情報法違反を犯しているとされる。
欧州委員会
EU全域のスキームに対する熱意に欠ける反応
ケミストリーワールド誌によると、研究者の一元的な市場を作り上げることに対する欧州委員会の計画は、熱意に欠けた反応を得ている。研究者ヨーロッパ組合は、年金等を各国間で移動できるという計画も提案している。ドイツ研究基金のフェルディ・シュス氏は、移動性が上がったとしても、それによって研究の質が良くなるとは考えていないと述べている。
オーストラリア
賃上げによる解雇
研究者組合による27%の賃上げ要求に応じるならば、オーストラリアの大学は研究者を書き子する必要が出てくるとしている。組合は、ここ3年間賃上げを要求している。
(要訳:OFIASインターン藁科智恵)
任期制研究者の歴史的勝利(THE 2008年6月5日号)
Historic win for fixed-term employee
法廷は、いくつかの任期制契約によって9年間継続して研究者を雇用していたアバディーン大学に対し、終身契約を否定する客観的な理由がないとした。大学は、任期制契約に対する資金の不定性を理由に挙げているが、それは理由にならないとされた。
アンドリュー・ボール氏は、動物学の研究者で、1999年からアバディーン大学にいくつかの契約で継続して雇用されていた。先月終わることになっていた契約をもって、自らのポストを終身雇用にすることを大学側に要求した。アバディーン大学では研究者の8%のみが終身契約であり、生物学では97%が任期制契約であり、この割合は例外ではない。ボール氏は、大学連合の支援を得て、この問題を法廷に持ち込んだ。
大学連合は、この勝利を足掛かりとして、他の雇用者に対しても行動を起こしていきたいとしている。
(要約:OFIASインターン藁科智恵)
学生との過度に正式な契約に要注意(THE 2008年4月24日号)
Academic lawyer cautions on use of overly formal student contracts
学生との契約を過度に公式にして法的に身動きができなくなるような状態は避け、大学は一定の柔軟性を維持すべきであるというアドバイスが出された。
イギリスでは現在9校の大学が学生契約を採用しており、他17校がその導入を考えている。
大学の運営における弁護士や法知識の重要性は否定できない。学生が訴訟を起こした場合や、論争を解決する際にはそういった契約が役にたつであろう。また、学生が自分達の知的財産権を主張した際大学としてのスタンスを示すのにも必要となってくる。
しかしながら、17歳や18歳の学生達は、契約を結ぶには若すぎるという問題点も指摘されている。
海外情勢(THE2008年4月24日号)
Overseas briefing
インド:積極的差別制度に支持
カースト制度が高等教育を受ける機会に与えている影響を減らそうという制度案が上院にかけられている。伝統的に職が制限されてきた「アンタッチャブル」の人々の状況に改善をもたらすこの積極的差別システムにより、インドの公立大学の定員の半分近くが低いカーストへ割り当てられる。一方、学問の質への悪影響や学生が成績に基づいて評価されないことに関し批判の声も上がっている。
米国:大学での発言の自由騒動
研究者に対し研究室のドアに貼られていた中絶やイスラムテロに関する漫画を外すよう命じたミシガン州のレーク・スーペリアー大学が非難を浴びている。「教育における個人の権利」基金によれば、他大学が寛容であったのはリベラルか左派的なものの掲示であったという。基金の代表は「公共の圧力へ従順であることによって起こる明確なダブルスタンダード」ではないかと述べている。
オーストラリア:高等教育を襲う雇用熱
資源ブームで雇用熱が高まり、非熟練職の賃金が上がった結果、大学が4,000人の定員割れを起こしている。大学関係者によれば、人口が増加している一方で大学へ入学する18歳人口が減っており、大学は需要を満たすために柔軟さを必要とする局面にあるという。
ガザ:イスラエルによる燃料カットで大学閉鎖
深刻な燃料不足により、地区内の主要大学4校が閉鎖された。AP通信社によれば、45,000人の学生が影響を受け、出席率が60%落ちたという。イスラエルからの燃料供給削減によるこの事態は交通費の高騰にも繋がり、住民のほとんどが一日2ドル未満で生き延びる現状の中、以前は1.7ドルの道のりが今では4ドルとなった。
米国:メールをめぐって教授が講義を中断
「大学での規律ある態度とは」という議論に火がついている。これは哲学の教授が、授業中にメールをやり取りする学生を見て講義をやめたのが発端である。黒人研究者として、民族的マイノリティの学生によるそのような行為に失望したというが、教室での学生行動の専門家は「モラルの観点から見て、集団的処罰というのはまずいのではないか」と言う。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
文化を知って盗用問題に立ち向かう(THE 2008年4月24日号)
Cultural insight can help tackle plagiarism.
中国人留学生によくある盗用の問題に対応するには文化の違いを理解しなければならない。それまで生涯かけて学んできた学習方法を捨て、欧米で勉強することは中国人留学生にとってかなりの負担であると広東外語外貿大学の教授が述べた。
「個人による主張や知的財産権のない中国文化にとって盗用は未知の概念である。知識は一握りの特権階級のもので、誰が何を言ったか皆が知っており、その情報源についての疑問はもたれない」
「賢者」の発言を、参照提示せずに利用することは中国では普通のことである。欧米では二次的資料をサポートとして利用し、自分の意見を述べるかもしれないが、「中国では、新たな主張を行う者は個人主義者だとして罰せられることもありうる」のだ。
特定のグループのみを「危険だ」とするステレオタイプをリーズ大学のアドリアン・スレイター氏は批判している。
盗用問題を考えるにあたっては、自分の意見を再利用する「自己盗用」や、公有財産の利用、評価済みの課題のまた借りなどにも注意しなければならない。ネット上で資料に簡単にアクセスできるようになったこともあり、性悪説をもってして学生に対応しなければならなくなった。
(要訳:OFIASインターン 山下梨江)
つまづくエジプト大学との共同ベンチャー(THE2008年4月24日号)
Egyptian joint venture falters
英国・ラフバラー大学とエジプト・ブリティッシュ大学の関係が、学部生単位認定問題で揺れている。両大学はより広いパートナーシップを視野に入れた単位互換制度について昨年9月に合意したが、その3ヶ月後から様々な問題に直面している。ブリティッシュ大学側に、学生の管理・分析不足、学生の移動や再評価情報のシステマティックな収集・蓄積の不足、英国出身教員をフルタイムで雇用出来ないことによる学生への悪影響が見られ、更には図書館やIT設備にも問題があるという。
本来は博士課程の学生の指導をブリティッシュ大学と共同で行うことを視野に入れていたラフバラー大学だが、学生受け入れに足るインフラをブリティッシュ大学が持っているかどうかの査定が必要であり、今後もモニタリングと再評価を行うという。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)
英国教員連合のパレスチナ援助に非難の声(THE2008年4月17日号)
UCU under fire for Palestine donation
英国教員連合が2000ポンドをパレスチナ自治区ヨルダン川西岸のビールゼイト大学へ寄付したことについて議論が巻き起こっている。この寄付に関して連合側は、連合のポール・ベネット国際部門長が持つビールゼイト大学との緊密な関係を活用して昨年度行われた共同プロジェクトに対する対価であると説明している。
一方でシェフィールド・ハッラム大学法学部教員のレズリー・クラフ氏によれば、これは「利害の争い」であるという。この寄付に反対して連合メンバーを降りた彼女は、教育・トレーニング目的に使われるべき慈善資金が住居や移動費に使われたことを暴露した。来月の連合年次総会においてイスラエルの大学の学術的ボイコットに関する議論を予定しているだけに、この対照的な動きは特に慎重に扱われるべき問題となっている。
(要訳:OFIASインターン 並木 麻衣)