オーストラリア大学生のための国語補修授業

Australian students get remedial language help



オーストラリア・メルボルンのモナシュ大学は、大学1年生の9割が名詞や形容詞の区別ができないという実態に対処するため、国語の補習コースを導入した。



同大学のダン教授によると、学生の大半が文法をほとんど理解していないという。



同大学講師のユンソン氏は、学生の読み書き能力の低下は、高等学校教育に起因すると指摘しており、国語教育カリキュラム作成者として、シドニー大学フリーボディー教授が選出されたことに対して疑問を抱いている。基礎的な読み書き能力より、クリティカルリテラシーに重きを置くフリーボディー教授の作成するカリキュラムでは、高校卒業者の読み書き能力向上は望めないという。



(要約:OFIASインターン前田葉)

QAAがバッキンガム大学の問題点を指摘

QAA finds fault with Buckingham



英国学生調査によると、バッキンガム大学の学生満足度は非常に高い。学内には元教育視察官の職員や、教育水準を専門とする教授も在籍している。


しかし、私大である同大学が、英国高等教育質保証機構(QAA)の監査を自主的に受けたところ、同大学の学術水準管理は信頼に値しないとQAAは報告した。QAAは、バッキンガム大学の学術水準、入学水準の管理不足や意思決定機能の脆弱さを指摘するとともに、同大学の学術水準を監督する学外諮問委員会も、バッキンガム大学の一部化しつつあるとして、その馴れ合い体制を批判した。また、新規開講コースの承認委員会も存在せず、委託された外部専門家が、コース提案者から受けとったチェックリストをそのまま教育委員会や送付しているという実態が判明した。


これに対し、同大学副学長キーレイ氏は、実際に授業や研究室、試験を視察することなく、大学を誹謗中傷したとしてQAAを非難した。また、同大学では、高い信頼が個人間で築かれているため、そういった委員会を必要としていないと反論した。



(要約:OFIASインターン前田葉)

海外動向(THE 2008年10月9日号)

Overseas briefing



インド


「革新」が進歩の鍵


インド全国技術教育審議会元会長のナタラジャン氏は、教育の質に関する第6回会合において、インドの高等教育は「革新」か、或いは「滅亡」かの瀬戸際にあると述べた。同氏は、学生が卒業後はすぐに就職しなければならないと感じていることが、インドの大学における研究の妨げとなっていると指摘している。学生がどれ程の知識を得ているかではなく、得た知識を使って何が出来るかを重視し、インプットよりアウトプット志向であるべきだと、ナタラジャン氏は主張する。




カナダ


学長、最後の贈り物


アルバータ大学ニューウェル学長が退職の折、北米先住民族の学生と教職員の会合の場所をキャンパス内に創設する為に、100万カナダドル(52万6千ポンド)を寄付した。同氏は、先住民族はマイノリティとして不利な集団であるが、教育によってその差が改善できる、と述べている。この寄付により、同大学の2008年度の寄付金額は5億カナダドルを越え、トロント大学に次ぐ多額の寄付を得ることに成功した。




オーストラリア


天文学者、主役になる


天文学者ペニー・サケット氏が、常勤のオーストラリア最高科学責任者に指名された(注)。同氏は11月より、非常勤として2年半勤めたピーコック氏の後任として同職に就くが、現在勤めているオーストラリア国立大学にも在籍は続ける予定である。サケット氏は女性科学者の会に所属し、英国王立天文学会の特別研究員でもある。




韓国


若者人口、減少傾向


韓国では、高齢化が大学に影響を与えている。若者人口の減少のため、一部の大学では、入学者数が定員の70%を下回る定員割れが起こっている。東亜日報によると、平均入学率は昨年度の95.8%から94.3%と下落し、首都ソウルから離れるほどその影響は深刻である。




アメリカ


イラク人研究員、差別を訴える


イラク人イスラム教徒の研究員が、礼拝用敷物に汚物を投げつけられたとして、テキサスA&M大学を訴えた。ムンディル・リダ氏とサイーダ・アリ・ムセン氏は、同大学生殖科学研究所で体外受精を専門に研究している。両氏は人種と宗教で差別を受けてきたとし、同大学と一部の部署、及び5人の元同僚を相手に訴訟を起こしていると、ニューヨークタイムズ誌は報道している。




アメリカ


代替療法、停止される


マイアミ大学チームによって行われてきた代替療法の研究が、療法に伴う危険性の説明が不足していたとして中止された。1500人の心臓病患者がこの研究に協力していた。この研究はビタミンやミネラル、キレート化合物の投与を行い、静脈注射によって血中のカルシウムを増加させるというものである。しかし、アメリカ心臓協会は、効果は立証されておらず、肝機能不全等の副作用を起こす可能性があると警告している。




注:オーストラリア最高科学責任者職が常勤となるのは、1996年以来初のことである。





(要約:インターン 早野文菜)

英国大学、世界大学ランキングにおいて転落(THE2008年10月9日号)

Fears four UK strength as its institutions slip down top 200







2008年度のTHE-QS世界大学ランキングによれば、アメリカの大学がトップの座を確固たるものとしているのに対し、イギリスの大学は地位転落の傾向にある。



ハーバード大学が5年連続で1位を獲得する一方、イギリスの名門であるケンブリッジ大学は3位に転落、オックスフォード大学は前年度の2位から4位へと落ち込んだ。上位100大学の内、イギリスの大学からは17校が選ばれているが、これは前年度より2校少なく、世界大学ランキング200全体においても、イギリスはその地位を落としつつある。



この結果は、イギリスでの研究教育資金額の問題を浮き彫りにしている。イギリスが高等教育に充てる予算の割合は、OECD諸国の平均を下回っており、アメリカの半分にも満たない。イギリスの研究型大学19校から成る、ラッセルグループ事務局長パイアット氏は、イギリスの大学の競争力への懸念を表明している。同氏は、中国やインド、ドイツ、フランス、中東やオーストラリアなどとの競争が激化している点を指摘し、資金不足のままでは競争に勝ち抜くことは難しいと述べている。



学生の授業料負担増も検討されているが、イギリスの大学も、今後はアメリカの大学のように、寄付金によって競争力を高める方向性にあると、ロンドン大学のグラント教授は述べている。


公共政策と高等教育を専門とする、テネシー州バンダビルト大学ロス助教授は、アメリカの大学教育は市場主導型であるために競争力が高いと述べる一方で、教育費の高さと格差の存在という欠点を指摘している。ロス教授によれば、進行中の経済不況や金融引き締め政策が、状況の変化に繋がる可能性は大きいという。



世界大学ランキングでは、アメリカとイギリスの大学が伝統的に上位を占める中、オーストラリア国立大学が16位、チューリッヒ工科大学が18位に食い込んだ。その他、南アフリカのケープタウン大学(179位)、ブラジルのサンパウロ大学(196位)と健闘する大学も現れている。









(要約:OFIASインターン 早野文菜)

学生、卒業後の投資に期待(THE 2008年9月4日号)

Students happy to invest in future





学生側の経済状況は厳しいが、多くの学生は学位取得によって、将来的に安定した投資が可能になると考えている。



2000人以上の全日制学生を対象とした大学生活調査(THE9月11日号に詳細掲載予定)によれば、卒業までに1万ポンド以上の借金を抱えることが予想される学生は63%で、2006年度の 39%という予測より大幅に増加している。更に1万5千ポンド以上は41%、2万ポンド以上は18%と、いずれの割合も2006年度調査に比べて増えている。しかし一方で、64%の学生が将来的な投資によってこの借金を返済できると考えている。これは、政府が来年度の学費水準見直しを考えていることによる。こうした楽観的見通しは学生の専攻分野によって異なる。先行きの不安を感じる学生は芸術や人文学系統に多く、薬学系統専攻では少ない。



金銭面に次いで大きな学生の不安は、仕事と学業、そして社会貢献の両立である。全国学生連合(NUS)は、バークベック大学クレア・カレンダー教授の意見を引いて、現行の補助金制度はむしろ学業に逆効果であると述べている。



ラッセルグループで与えられる奨学金は1791ポンドで、77%が学生の経済状況を支給基準としている。一方でミリオン・プラスにおいてはそれぞれ680ポンド、45%である。ミリオン・プラス事務総長のパム・タットロー氏は、現在の制度における不均衡を正すため、総体的な援助の見直しが必要であると述べている。



NUSの調査によれば、政府が授業料の上昇に歯止めをかけなければ、学生の借金は卒業によるメリットを超えると予測されている。そうなれば財政状況によって教育機関間の差も広がり、講師陣は生徒の要求に応えるため、更なる重圧に耐えねばならなくなる。そして学生は今以上に働かなければならなくなるだろうと考えられる。





(要約:OFIASインターン 早野文菜)

海外動向(THE 2008年8月21日号)

oversea briefing





アメリカ:懲戒処分の講師、職場復帰
自身の開講する講座に履修登録したために解雇された大学講師、ヘンリー・ダグラス氏が、裁定人の判断により復職する。同氏はアラバマのビショップ・ステート・コミュニティ・カレッジ講師であり、資格基準を満たす為、大学役員より講座の登録を勧められたと主張している。今回の裁定人であるジェームズ・オドム氏は、懲戒が妥当であり、それ以上の処罰は不当であると判断した。



韓国:大学全入時代の到来
高等教育の場の拡大により、大学受験生総数に対し、定員数が大幅に増加している。この為、受験生はたとえ入学試験で0点をとったとしても合格することが可能となった。政府による大学設置基準緩和と高等学校の大学化が行われて以来、韓国の大学数は大幅に増加している。



オーストラリア:中国人留学生、高まる犯罪率に警戒
オーストラリア各都市の高い犯罪率は、アジアからの留学生流入の妨げとなっている。在シドニー中国領事館は、オーストラリアに留学生の保護をより強く訴えている。ニューサウスウェールズ州は、18万人を超える留学生を受け入れているが、中国人留学生が最も多くの割合を占めている。



ヨーロッパ:ヨーロッパ大陸の教育の質、保証される
高等教育質保障機構が、欧州質保障登録簿(EQAR)の登録申請に向かっている。この登録簿は欧州高等教育の調和を目指すボローニャ・プロセスの指標とされている。登録が承認されれば質保障機構は個々に報告書を提出することが義務付けられる。EQAR理事会会長のレスリー・ウィルソン氏は、登録簿は欧州の学生と職員に、教育機関と学位取得プログラムの信頼性を示すと述べている。



インド:教育機関、危機的状況に陥る
60年の歴史を誇るガウハチ大学は、2006年に発覚した財政上の不正行為と大学副総長の解任のため、苦境に立たされている。後任である、著名な物理学者アマリヨティ・チョウドハリー氏も政府を批判したために、二年足らずで辞任した。インド・エキスプレス紙は、ガウハチ大学は深刻な財政危機に苦しんでいると報道した。



アメリカ:全裸写真で退部処分
ネブラスカ大学学生ポール・ドナホーとケニー・ジョーダンは、同性愛者向けアダルトサイト、Fratmetv.comに全裸写真を公開したとして、同大学レスリング部を退部処分となった。同サイトの管理者は、学生達への謝礼は充分に支払われており、昨今の学生スポーツ選手であれば、猥褻事件の汚名を長く引きずることもないと述べている。





(要約:OFIASインターン 早野文菜)

不祥事調査の為の新組織、発足に向かう(THE 2008年7月31日号)



大学の不祥事調査及び事例の収集の権限を持つ組織の設立が、英国研究委員会(RCUK)からの諮問文書中で提唱された。この新しい組織の目的は、主に教育現場全般の規律を守り、不祥事対処を促進することである。その他、学内からの不満の調査、及び不祥事の事例とそれに対する懲罰資料のデータベース管理、情報提供を行う。


学術出版における倫理委員会(Cope)のハーヴィー・マルコビッチ氏は、こうした組織の設立に賛成している。現在は、事例の包括的な管理体制が未だ存在せず、個々の機関が自身に不利な事例をこっそり隠蔽することも可能である。類似の組織としては英国保健・生体医科学研究公正委員会が存在するが、調査権限は与えられていない。


英国研究公正局(UKRIO)局長のアンディ・ステインソープ氏も外部から調査されるべき問題の存在を認め、組織の設立を歓迎している。一方でUKRIOは匿名の事例データベースを独自に作成することを計画している。


RCUKの諮問文書は、イギリスの各教育機関は、軽微な問題をきちんと調査しておらず、このことは、問題を手に負えなくなるまで放っておく傾向を助長している、と批判している。



(要約:OFIASインターン 早野文菜)

海外動向(THE 2008年7月24日号)

Overseas briefing

日本:少子化による打撃
少子化など人口構成の変化と公的資金の減少により、大学は運営の危機に瀕している。今年度の大学入学者はピーク時の1992年に比べ70万人減少した。既に3校が志願者不足により、閉鎖に追い込まれている。

カナダ:無実の解雇教授、訴訟を起こす
アカディア大学教授が、婦女暴行の嫌疑の為に解雇されたことに対し、大学を相手に訴訟を起こした。同教授はある女性に暴行を加えた疑いで取調べを受けたが、警察から無実を証明する手紙を受け取ったと主張しており、大学側の処分を不当であるとしている。

オーストラリア:カーネギーメロン大学、ようやく開校
カーネギーメロン大学アデレードキャンパスが、予定より大幅に遅れて開校となった。同校は立ち上げ資金として政府より2500万オーストラリアドルを受け取っている。また、全生徒に公的資金より22万7千オーストラリアドルが支給される。同大学への援助額はアデレードの他大学に比べ16倍も多い。アレクサンダー・ダウナー外務大臣が、今回のキャンパス開校の功労者である。

インド:「新入生いじめ」反対組織発足
インドの高等教育機関では、精神的嫌がらせや性的暴力を含む「新入生いじめ」が長く根付いており、最高裁も動き出している。デリー大学では、「新入生いじめ」を撲滅し、新入生を守る為の組織が発足した。

アメリカ:メディアを用いた新しいカンニング
学生達が、YouTubeに投稿したビデオ映像を用いてカンニングの方法を共有していることが判明した。こうした映像はカリフォルニア大学のリズ・ロッシュ教授のブログで紹介されている。同教授は、どのようにカンニングをするかではなく、どのように勉強するかを教えるビデオが作れないものかと、自身のブログに書き込んでいる。

インド:「手品学」の学位、出現
11月、カルカッタにて世界初の「手品の大学」が開校する。創立者はマジシャンのP.・C・ソーカー氏であり、心理学、舞台演劇、照明技術などの講座が開講される予定である。卒業生には「手品学修士」の学位が与えられる。

(要約:OFIAS インターン早野文菜)

スコットランドのPost-1992年大学、統合へ向かう(THE 2008年7月17日号)


スコットランドのPost-1992年大学(1992年の法改正で大学に昇格した機関)6校が、統合に向けて動き出している。この6校とは、アバティー・ダンディー大学、グラスゴー・カレドニアン大学、ネピア大学、クイーン・マーガレット大学、ロバート・ゴードン大学、西スコットランド大学であり、各学長は、研究の向上と学生の選択肢の幅の拡大のため、この抜本的な改革を進めている。アバティー・ダンディー大学のバーナード・キング学長は、これまでPost-1992年大学に対して十分な資金提供がされておらず、この点についても6大学の間で議論が重ねられてきたとしている。


この統合計画は、圧力団体やラッセルグループ(イギリスの研究型大学19校からなるグループ)のような集団を形成するためのものではなく、従来の組織構造を崩すつもりはないと、各大学長は述べている。しかし一方で、この統合が資金源や運営方針に影響を与えるものであることを明らかにしている。


スコットランド高等教育に関する特別委員会は、中間報告で、統合は各大学の運営コスト削減・効率化を図るものである、と述べている。


(要約:OFIASインターン早野文菜)

海外動向(THE2008年7月10日号)

Overseas briefing
カナダ:助成金の大幅削減
大学への助成金が大幅に削減された。1980年代初頭には学生一人当たり21,000カナダドル、1990年代初頭には、17,000カナダドルの州助成金を受け取っていたのに対し、昨年は15,000カナダドルとなったとグローブアンドメール紙が報じた。カナダ大学連盟の調査によれば、カナダの大学への学生一人当たりの助成金額はアメリカの大学より8,000カナダドル少ないという。

インド:デリ大学での入試合格ラインは95%
インドの一流大学の受験競争の激化により、90%以上の正答率でも不合格となる。デリ大学では、人気の高いコースの合格ラインは正答率95%だったという。ハイヤーオーダーシンキングスキルテストの結果が予想以上に悪かったことがこの状況に拍車をかけている。

アメリカ合衆国:国境が大学の結束を分かつ
テキサス州にある大学のキャンパスが国境のフェンスで分割された。同大学はメキシコ・アメリカ戦争の戦場となったリオ・グランデに近く、様々な形でアメリカとメキシコの友好関係を築くことを使命としてきた。この事態に対し、同大学大学の方針を全く無視するものだとこの計画を批判している。

ヨルダン川西岸、ガザ地区:銀行の先駆的な試み 教育ローン制度を整備
ヨルダン川西岸とガザ地区で学生ローンプログラムが立ち上げられた。初の試みで、パレスチナ銀行が資金を提供し、年間8,000人の学生に最高1千万ドルを提供する。世界銀行によれば、この制度は教育ローンを返済するという文化を築くとともに、大学に安定した授業料をもたらすという。

中国:入試不正に関与した政府高官を逮捕
国立大学の入学試験の不正に関与したとして、地方政府高官が逮捕された。政府によれば、偽造登録文書の作成や替え玉受験が行われたという。その中の一人間違えて自分の名前を答案用紙に記入したことから事件は発覚した。

オーストラリア:家政婦のように扱われる非常勤講師
大学の授業の80%を非常勤講師が担っていると報告された。非常勤講師に依存しているというこの状態は、まるでビクトリア時代に中流階級の家庭が家政婦に依存していた状態のようであるという。しかしこの傾向を覆すのは難しいといえる。
(要約:OFIASインターン 前田葉)